リチウムイオン電池の電極作製工程【リチウムイオン電池の製造(組立)工程】

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リチウムイオン電池の電極作製工程【リチウムイオン電池の製造(組立)工程】

 

リチウムイオン電池を作製するには、大きく分けて正・負極作製工程、エレメントの組立工程、筐体への挿入・注液・封止工程、電気的処理工程があります。
※リチウムイオン電池製造の流れはこちらで解説しています。)

 

こちらのページでは、

 

・正・負極の電極作製の概要

 

・正極スラリー混練工程

 

・正極スラリー塗工工程

 

・負極スラリー混練工程

 

・負極スラリー塗工工程

 

について解説します。

 

(※リチウムイオン電池の生産工程における検査方法はこちらで解説しています

 

 

正・負極の電極作製の概要

リチウムイオン電池の組立(製造)工程の流れはこちらで解説していますが、まず初めにリチウムイオン電池構成部材である正極・負極の作製をします。

 

正・負極の各電極を作製する流れは以下のフローの通りです。

 

各工程の詳細は以下に記載しています。

 

 

 

正極スラリー混練工程

上記フローのように、正極では活物質、導電助剤、バインダー、有機溶剤を混合させ、正極用のスラリーを作製します(例として溶剤系正極を記載しています(溶剤系と水系があり詳細は下記にて解説しています。))

 

正極活物質として、代表的なものにコバルト酸リチウム、マンガン酸リチウム、リン酸鉄リチウムなどが挙げらえます。

 

活物質により、容量作動電圧レート特性や安全性など電池に必要なパラメータが大きく変化します。

 

各企業によりリチウムイオン電池の材料自体の選定、材料の組成、混合・撹拌方法や装置が大きく異なりますので、下記では一般的な内容について解説しています。(詳細は正極構造の詳細

 

 

各材料の役割としましては、活物質はLiイオンの供給源(充電時)として働き、導電助剤は正極の導電性を上げ内部抵抗を小さくするため、バインダーは集電箔に混合した材料を結着させるため、有機溶剤は混合・撹拌し易くするためだけでなく、スラリーの粘度を調整し箔に塗工しやすくするために、使用します。

 

スラリーがうまく混合されていないと各々の物質の本来の性能がだせず、容量が低下したり内部抵抗が大きくなる傾向があります。

 

 

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正極スラリー塗工(塗布)工程

 

そして、このスラリーを集電箔であるアルミ箔(一般的にアルミ箔を使用する理由はこちらで解説しています。)の両側に正極スラリーをに一定の厚みで塗工、乾燥させます(集電箔に対して、片方正極スラリー、もう一方に負極スラリーを塗工(塗布)、乾燥させたものはバイポーラ電極と呼ばれ、一般的な電極と区別されます。)

 

アルミ箔の厚みは10~20μm程度であり、両面に塗布(塗工)、乾燥した後の電極の厚みは数十~200μm程度です。

 

スラリーを厚く塗るほど容量が大きいがレート特性が下がる電池ができ、薄く塗るほどレート特性が大きい が容量が小さい電池ができる傾向にあります。

 

塗工する方法としては、集電箔をベルトコンベアのように一定の速度で回し、その上にスラリーをダイヘッドから流す方法が一般的です。

 

塗工する装置自体のことをコータと呼びます。

 

塗られた電極はこの後続くエレメント作製工程にて、積層式か巻回式(捲回式)かにより加工方法が変化します。

 

巻回式でエレメントを作製するための電極では、そのまま負極、セパレータと合わせて巻くため、電極の長さが長くなります。

 

これに対して、積層式でエレメントを作製するための電極では、巻回式で作製するための電極よりも電極の長さが短くなります。

 

 

正極(巻回式でエレメント作製用)は以下の通りです。

 

 

正極(積層式でエレメント作製用)は以下の通りです。

 

 

 

また、これらの電極の厚みや質量は電池設計をする上でエネルギー密度に大きく影響するため重要であり、これらの値を用いて電池の容量計算する方法(電池設計シート)多孔度からその厚みの計算する方法についてはこちらで解説しています。

 

 

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負極スラリー混練工程

上記フローのように、負極では活物質、バインダー、有機溶剤を混合させ、負極用のスラリーを作製します(例として溶剤系負極を記載しています)。

 

一般的に負極では活物質に炭素系材料を使用するため導電性が高く、導電助剤は入れないことが多いですが、負極にもより導電性の高い導電助剤を入れ、内部抵抗を下げる試みを行っている場合もあります。

 

正極も同様ですが、水系にて作成する場合には、活物質とバインダーに加えて、有機溶剤でなく、増粘剤であるCMC、水を加えて作製します(ただし、最適化されていない場合は増粘剤が活物質を覆い内部抵抗が高くなることが多い傾向にあります)。

 

負極活物質として、代表的なものに黒鉛、チタン酸リチウムなどが挙げらえます。

 

活物質により、容量作動電圧レート特性や安全性など電池に必要なパラメータが大きく変化します。

 

正極同様に、各企業によりリチウムイオン電池の材料自体の選定、材料の組成、混合・撹拌方法や装置が大きく異なりますので、下記では一般的な内容について解説しています。

 

各材料の役割としましては、活物質はLiイオンの受け取り先(充電時)として働き、バインダーは集電箔に混合した材料を結着させるため、有機溶剤は混合・撹拌し易くするためだけでなく、スラリーの粘度を調整し箔に塗工しやすくするために、使用します。

 

こちらも正極同様に、スラリーがうまく混合されていないと各々の物質の本来の性能がだせず、容量が低下したり内部抵抗が大きくなる傾向があります。

 

 

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負極スラリー塗工工程

 

そして、このスラリーを集電箔である銅箔(一般的に銅箔を使用する理由はこちらで解説しています。)の両側に負極スラリーをに一定の厚みで塗工、乾燥させます(集電箔に対して、片方負極スラリー、もう一方に正極スラリーを塗工、乾燥させたものはバイポーラ電極と呼ばれ、一般的な電極と区別されます。)

 

銅箔の厚みは8~20μm程度であり、両面に塗工、乾燥した後の電極の厚みは数十~200μm程度です。

 

一般的には負極の方が正極より薄い傾向にあります。

 

正極同様に、スラリーを厚く塗るほど容量が大きいがレート特性が下がる電池ができ、薄く塗るほどレート特性が大きいが容量が小さい電池ができる傾向にあります。
(ただし、正極、負極の容量バランスも電池設計に重要であるため、片方が厚くなるともう片方の電極も厚くする場合が多いです)

 

塗工する方法や電極加工の方法は正極とほぼ同様です。

 

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