レドックスフロー電池の構成と反応、特徴
レドックスフロー電池はナトリウム硫黄電池(NAS電池)と同様に大規模な施設(例えば発電所や変電所)向けの電力貯蔵用に向いている電池であり、導入によるピークシフト対策(電気料金の低減)や瞬低対策の効果が期待されます。
また、レドックスフロー電池は電池というよりも反応する各電極が大きなタンクになっているため、小さな蓄電所というニュアンスの方が近いと言えるでしょう。
こちらのページでは、
・レドックスフロー電池の構成と反応
・レドックスフロー電池の特徴
というテーマで解説しています。
レドックスフロー電池の構成と反応
レドックスフロー電池は繰り返し充電可能な二次電池に分類されます。
レドックスフロー電池の構成する材料は以下の通りです。
使用材料
正極
・正極活物質:硫酸バナジウム溶液(VO2+(4価のバナジウムイオンを含む))
負極
・負極活物質:硫酸バナジウム溶液(V3+(3価のバナジウムイオン))
セパレータ
・イオン交換膜(正極、負極ともに溶液のため、イオンの混ざりを防ぐため)
電解液
溶媒:水
電解質:硫酸(H2SO4)
レドックスフロー電池の構成と反応
上述の材料を組み合わせたレドックスフロー電池の構成は以下の通りです。
一般的な電池とは異なり、反応させる各極の活物質は外部のタンクに溜められており、
ポンプで循環させることで反応させます。
なお、反応自体は両極ともカーボンフェルト電極上でおこり、反応時に生成されるH+はイオン交換膜を通り、反応します。
そして、電子エネルギーが高い位置(標準電極電位が関係しています)にある負極のV2+イオン側から外部負荷回路を通り電子が移動、反応で生成されるH+(初回充電時に正極から負極へ移動している)はイオン交換膜を移動し、正極へ向かいます。
そして、正極のV5+イオンと、電子が反応し、V4+へ還元されます(正極は別名:カソード、負極は別名:アノードとも呼ばれます)。
反応式は以下の通りです。
関連記事
アノード、カソードとは?
標準電極電位とは?起電力の算出方法
マンガン乾電池の構成と反応
アルカリマンガン乾電池の構成と反応
鉛蓄電池の構成と反応
ニッケル・水素電池の構成と反応
ニッケル・カドミウムの構成と反応
リチウムイオン電池の構成と反応
レドックスフロー電池の特徴
レドックスフロー電池の特徴は以下の通りです。
各パラメータ
・公称電圧:1.4V
・実際の容量:外部タンクの大きさ等により大きく変化させることが可能
・実際の質量エネルギー密度:10〜30 Wh/kg程度
・実際の体積エネルギー密度:15〜40 Wh/kg程度
・形状:小規模な発電所のようなイメージ
また、特徴は以下が挙げられます。
特徴(メリット)
・充放電サイクルが非常に長い
・外部タンクの大きさを変更することにより容量を容易に変化させることが可能(NAS電池同様大規模な貯蔵向き)
・電解液等の構成材料自体の劣化が少ない
特徴(デメリット)
・活物質は水溶液に溶解させたものであり、溶解度に限界があるためエネルギー密度が低いこと
・外部タンク等を設ける必要もあり、小型化には不向きであること
・循環させるためのポンプ設置、稼働のコストもかかること
主な用途
NAS電池同様に、大規模な施設への設置向きの電池であり、電力貯蔵用電池として使用されています。
例えば、変電所や発電所(風力発電など)のピークシフト対策(電気料金の低減)や瞬低対策として導入されています。
※一般家庭向けの電池ではないため、使用時の注意点は割愛させていただきます。
関連記事
容量(Ah,mAh)とは?
質量エネルギー密度とは?
電池の内部抵抗、作動電圧とは?
ピークシフトとは?
瞬低とは?
マンガン乾電池の構成と反応
アルカリマンガン乾電池の構成と反応
鉛蓄電池の構成と反応
ニッケル・水素電池の構成と反応
ニッケル・カドミウムの構成と反応
リチウムイオン電池の構成と反応
レドックスフロー電池の構成と反応、特徴 関連ページ
- 電池関連の用語まとめ
- 容量(Ah,mAh容量),組電池の容量,SOC,DODとは?
- 【電池の容量】mAh,AhからWhに変換する方法【飛行機持ち込み160Wh以下かどうか判定する方法】
- 放電終止電圧、充電上限電圧とは?
- 【電池設計の基礎】電池設計シートを作ろう!1 容量の設計
- 【エネルギー密度の計算】多孔度と真密度から電極の厚みを計算してみよう!
- SOH(電池の基礎用語)とは?
- 電池の容量の計算方法
- 組電池とは?組電池の容量と電圧の計算方法
- Wh容量、SOC-OCV曲線、充放電曲線とは?○
- 電池の評価に使われている1C,2Cとは何のこと?時間率とは?○
- 電池の充放電効率(クーロン効率)とは?
- 容量維持率とは?サイクル試験時の容量維持率
- サイクル試験とは何?一般的なサイクル試験条件と結果○
- サイクル試験と温度の関係性は?サイクル試験とSOCの幅の関係性
- フロート試験とは何?一般的なフロート試験条件と結果○
- 【電池発火時の対処・消火方法】リチウムイオン電池が発火した際、水はかけるべき?
- 【電池はなぜ発火する?】リチウムイオン電池が発火のメカニズム(原理)
- トリクル充電とは?○
- CC充電とは?
- CCCV充電とは?○
- パルス充電とは?鉛蓄電池に使用すると寿命が延びる?
- 【図積分】CC充電、CCCV充電時の充電電気量の計算方法
- 電池はどうやって捨てる?電池の廃棄方法は?○
- SOC-OCV曲線から充放電曲線をシミュレーションする方法
- リチウムイオン電池の取扱い上の注意点○
- リチウムイオン電池を長持ちさせる方法
- リチウムイオン電池の充電時に対応していない充電器を使用した時の危険性
- 外部温度と電池の容量の関係(寒い方が容量小さい?)
- 質量エネルギー密度、体積エネルギー密度とは?
- 電池の分類
- マンガン乾電池の構成と反応、特徴○
- アルカリマンガン乾電池の構成と反応、特徴
- マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池の構造詳細
- マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池の放電曲線
- 乾電池の残量を測定する方法(マンガン電池、アルカリ電池)
- アルカリマンガン乾電池表面に付着した白い粉の対処方法
- ニッケル・水素電池の構成と反応、特徴
- リチウムイオン電池の構成と反応、特徴【リチウムイオン電池の動作原理】
- 鉛蓄電池の構成と反応、特徴
- ニッケル・カドミウム電池(ニッカド電池)の構成と反応、特徴
- ナトリウム硫黄(NAS)電池の構成と反応、特徴
- 二次電池の性能比較 作動電圧、エネルギー密度、寿命、作動温度範囲、安全性の比較
- メモリー効果とは?メモリー効果と作動電圧
- オームの法則、作動電圧と内部抵抗、出力とは?
- 電池の劣化係数とは?
- 交流抵抗と直流抵抗の違い(電池における内部抵抗)
- 通電時間と直流抵抗の関係
- 電池の端子電圧と正極電位、負極電位の関係
- 電池の知識 分極と過電圧、充電方法、放電方法
- 比熱と熱容量
- 電池の知識 電池通電時の自己発熱
- 電池の知識 電池の常温時と低温時の内部抵抗の変化
- リチウムイオン電池の安全性
- 過充電とは?過充電すると何が起こる?
- 【スマホの過充電?】過充電という言葉の誤った使い方
- アノード、カソードって何?酸化体と酸化剤、還元体と還元剤の違いは?
- 電析とは何?電析と安全性
- 電析が起こる原因と条件 起こさないための対応策は?
- 電気二重層キャパシタとは?電池との違いは?
- キャパシタとコンデンサ−は厳密には異なる!?EDLCの原理
- 【充電式電池】新しい電池と古い電池を同時に使用するとどうなる!?
- コイン電池の種類と頭文字の記号
- 電池と燃料電池の違いは?固体高分子形燃料電池の構造と反応
- 電池の回路図の記号は?長い方が+? ○
- 単位Nとkgfの違いは? NやJをkg,m,sで表そう
- 電池の短絡とは?短絡が起こる場合と対策
- コイン電池とボタン電池の違いは?
- 乾電池に記載のAAやDなどの記号は何?乾電池の大きさとパワーの違い
- バイポーラ電池(バイポーラ電極使用電池)とは?メリットとデメリット
- 瞬低とは?瞬時電圧低下とは?
- ヒューズとは?単電池や組電池におけるヒューズの役割
- シャント抵抗とは?
- 自己放電(電池の用語)とは?
- OCV(開回路電圧、開放電圧)とは?
- コイン電池、ボタン電池の構造詳細、残量の測定方法
- 公称電圧とは?作動電圧との関係性
- 平均作動電圧とは?作動電圧との関係性
- リチウムイオン電池とリチウム金属電池は違うもの?
- リチウムイオン電池とリチウムポリマー電池は違うもの?
- リチウムイオン電池の活性化過電圧、濃度過電圧、IR損とは?
- 電池の対向容量比とは?利用容量とは?電池設計の基礎
- CC充電とCCCV充電 定電流充電と定電流定電圧充電は同じもの??
- バッテリー記載のCCAとは?【バイク用バッテリー】
- 【大きいほど低抵抗?】リチウムイオン電池の容量と内部抵抗の関係
- 【内部抵抗の計算】リチウムイオン電池の内部抵抗と反応面積から予想してみよう!
- 【リチウムイオン電池の接触抵抗低減】Al箔やCu箔の接触抵抗を下げる方法
- リチウムイオン電池のドライアップとは?
- 電動ドライバー用バッテリーの特徴【リチウムイオン電池と二カド電池の違い】
- リチウムイオン電池とアルカリ電池の違いは?
- リチウムイオンバッテリーが寒さに弱い理由は?【スマホ用バッテリー】
- 【サイズや種類】リチウムイオン電池と大きさの関係性【安全性の違い】