電析とは何?電析と安全性

電析とは何?電析と安全性

 

こちらのページでは、リチウムイオン電池における基礎的な用語である

 

・電析とは何?

 

・電析により何が起こる?電析と安全性

 

・リチウムイオン電池における電析量の概算方法

 

について解説しています。

 

 

電析とは?

 

一般的なリチウムイオン電池では、正極活物質にコバルト酸リチウム負極活物質に黒鉛電解液に有機電解液を使用しています。

 

黒鉛負極では、充電時にリチウムイオンが黒鉛に挿入されるに伴い、負極の電位が下がっていきます。

 

そして、リチウムが挿入された後の黒鉛負極の作動電位は、リチウムの溶解析出電位に対して0.1V vs Li+/Li 程度とLiの溶解析出電位とかなり近いです。

 

そのため、負極に何かしらの大きな負担がかかることで、Liの溶解析出電位(Liの標準電極電位)に達することがあり、充電時にこの電位に達するとLiイオンがLi金属として負極の表面に析出します。
チタン酸リチウムのように、反応電位がLiの溶解析出電位より高い(1.5V vs Li+/Li程度)材料を使用すればば、電析の心配は非常に少なくなります)

 

特に、低温時の高レート充電を行った場合、黒鉛中の固体内拡散が遅く、電荷移動反応の方が速くなる傾向にあるため、Liイオンが負極表面で詰まるようなイメージでLi金属が析出します。

 

リチウムイオン電池においては、上記のようLi金属が負極表面に析出することを電析と呼びます。

 

それでは電析が起こると何か問題があるのでしょうか?

 

関連記事

コバルト酸リチウムの反応と特徴
黒鉛の反応と特徴
標準電極電位とは?
チタン酸リチウムの反応と特徴
電極反応のプロセス(拡散と電荷移動反応)

 

 

電析により何が起こる?電析と安全性

 

充電時に電析が起こったとしても、電析量が少量であれば放電時に溶解し特に問題がないです。

 

しかし、電析量が多かったり、局所的にデンドライト状に析出すると負極で析出したLi金属がセパレータを貫通し、正極とつながり内部短絡を起こす可能性があります。

 

つまり、電析が起こると安全性が低下する傾向にあります。

 

また、この時に内部短絡が起きなかったとしても、放電時に溶解する時にLi金属と負極がつながっている根元から溶解反応が起こるため、Li金属が切れ電池内部に残ることがあります。

 

そして、この残ったLi金属が振動などの外部からの力によりセパレータを突き破り、時間が経ってから内部短絡を起こす可能性があるのです。

 

また、内部短絡だけではなく、例えば燃焼試験を行った場合なども、電析が起きているとLi金属は反応しやすいため、より強く発火するなど、安全性が低下する方向に働きます。

 

そのため、電析が起こらないように電池や電池システムを設計することが重要です。

 

電析が起こらないようにするためには、上述のようにチタン酸リチウムのように、反応電位が高い材料を使用するか、黒鉛を使用した場合でも負極の対向容量比を下げる(負極の利用容量を下げる)たり、正極に対する負極の内部抵抗を下げることで負極の作動電位を上げる電池設計にするという方法もあります。

 

関連記事

 

リチウムイオン電池における安全性とは?
リチウムイオン電池におけるセパレータの位置づけ
コバルト酸リチウムの反応と特徴
黒鉛の反応と特徴
標準電極電位とは?
チタン酸リチウムの反応と特徴
内部抵抗とは?

 

 

リチウムイオン電池における電析量の概算方法

 

リチウムイオン電池における電析量は、低温におけるサイクル試験を行うことで概算できます。

 

具体的には、−20℃といった低温下で高レートの充電を充電上限電圧付近もしくはそれ以上で充電するというサイクル試験を行い(放電は通常条件(1Cで通常の放電終止電圧)、放電容量の容量維持率を縦軸に、サイクル数を横軸にとったグラフを作成し、急激な容量低下が起きていればほぼ電析が起きていると考えてよいでしょう。

 

そこで、あるサイクルの充電時における電析量を計算した場合は、その前の放電容量とその後の放電容量の差を比べて、その容量低下分がおよそ電析量に当たると仮定することで、電析量の概算を行えます。

 

例えば、あるサイクル時の充電前後の放電容量が10Ah→8Ahに急激に低下したとします。

 

すると、2Ah分が電析に使用された電気量であると仮定できます。

 

ここで、Ah=3600C (C=Asであるため) を用いますと、2Ah = 7200Cとなります。

 

ファラデーの法則が成り立つためファラデー定数(96500 C /mol)を用いて、7200 / 96500 = 0.075 mol のLi金属が析出したと概算できます(めっきなども同様にこのファラデーの法則によりめっき量が決まります)

 

リチウム金属の原子量6.94を用いますと0.075mol × 6.94g/mol = 0.52g のLi金属が析出したと概算できました。

 

関連記事

 

レート特性とは?
充電上限電圧とは?
サイクル試験とは?
ファラデーの法則とは?
めっきとは?めっきの種類と特徴

 

 

電析とは何?電析と安全性 関連ページ

電池関連の用語まとめ
容量(Ah,mAh容量),組電池の容量,SOC,DODとは?
【電池の容量】mAh,AhからWhに変換する方法【飛行機持ち込み160Wh以下かどうか判定する方法】
放電終止電圧、充電上限電圧とは?
【電池設計の基礎】電池設計シートを作ろう!1 容量の設計
【エネルギー密度の計算】多孔度と真密度から電極の厚みを計算してみよう!
SOH(電池の基礎用語)とは?
電池の容量の計算方法
組電池とは?組電池の容量と電圧の計算方法
Wh容量、SOC-OCV曲線、充放電曲線とは?○
電池の評価に使われている1C,2Cとは何のこと?時間率とは?○
電池の充放電効率(クーロン効率)とは?
容量維持率とは?サイクル試験時の容量維持率
サイクル試験とは何?一般的なサイクル試験条件と結果○
サイクル試験と温度の関係性は?サイクル試験とSOCの幅の関係性
フロート試験とは何?一般的なフロート試験条件と結果○
【電池発火時の対処・消火方法】リチウムイオン電池が発火した際、水はかけるべき?
【電池はなぜ発火する?】リチウムイオン電池が発火のメカニズム(原理)
トリクル充電とは?○
CC充電とは?
CCCV充電とは?○
パルス充電とは?鉛蓄電池に使用すると寿命が延びる?
【図積分】CC充電、CCCV充電時の充電電気量の計算方法
電池はどうやって捨てる?電池の廃棄方法は?○
SOC-OCV曲線から充放電曲線をシミュレーションする方法
リチウムイオン電池の取扱い上の注意点○
リチウムイオン電池を長持ちさせる方法
リチウムイオン電池の充電時に対応していない充電器を使用した時の危険性
外部温度と電池の容量の関係(寒い方が容量小さい?)
質量エネルギー密度、体積エネルギー密度とは?
電池の分類
マンガン乾電池の構成と反応、特徴○
アルカリマンガン乾電池の構成と反応、特徴
マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池の構造詳細
マンガン乾電池、アルカリマンガン乾電池の放電曲線
乾電池の残量を測定する方法(マンガン電池、アルカリ電池)
アルカリマンガン乾電池表面に付着した白い粉の対処方法
ニッケル・水素電池の構成と反応、特徴
リチウムイオン電池の構成と反応、特徴【リチウムイオン電池の動作原理】
鉛蓄電池の構成と反応、特徴
ニッケル・カドミウム電池(ニッカド電池)の構成と反応、特徴
ナトリウム硫黄(NAS)電池の構成と反応、特徴
レドックスフロー電池の構成と反応、特徴
二次電池の性能比較 作動電圧、エネルギー密度、寿命、作動温度範囲、安全性の比較
メモリー効果とは?メモリー効果と作動電圧
オームの法則、作動電圧と内部抵抗、出力とは?
電池の劣化係数とは?
交流抵抗と直流抵抗の違い(電池における内部抵抗)
通電時間と直流抵抗の関係
電池の端子電圧と正極電位、負極電位の関係
電池の知識 分極と過電圧、充電方法、放電方法
比熱と熱容量
電池の知識 電池通電時の自己発熱
電池の知識 電池の常温時と低温時の内部抵抗の変化
リチウムイオン電池の安全性
過充電とは?過充電すると何が起こる?
【スマホの過充電?】過充電という言葉の誤った使い方
アノード、カソードって何?酸化体と酸化剤、還元体と還元剤の違いは?
電析が起こる原因と条件 起こさないための対応策は?
電気二重層キャパシタとは?電池との違いは?
キャパシタとコンデンサ−は厳密には異なる!?EDLCの原理
【充電式電池】新しい電池と古い電池を同時に使用するとどうなる!?
コイン電池の種類と頭文字の記号
電池と燃料電池の違いは?固体高分子形燃料電池の構造と反応
電池の回路図の記号は?長い方が+? ○
単位Nとkgfの違いは? NやJをkg,m,sで表そう
電池の短絡とは?短絡が起こる場合と対策
コイン電池とボタン電池の違いは?
乾電池に記載のAAやDなどの記号は何?乾電池の大きさとパワーの違い
バイポーラ電池(バイポーラ電極使用電池)とは?メリットとデメリット
瞬低とは?瞬時電圧低下とは?
ヒューズとは?単電池や組電池におけるヒューズの役割
シャント抵抗とは?
自己放電(電池の用語)とは?
OCV(開回路電圧、開放電圧)とは?
コイン電池、ボタン電池の構造詳細、残量の測定方法
公称電圧とは?作動電圧との関係性
平均作動電圧とは?作動電圧との関係性
リチウムイオン電池とリチウム金属電池は違うもの?
リチウムイオン電池とリチウムポリマー電池は違うもの?
リチウムイオン電池の活性化過電圧、濃度過電圧、IR損とは?
電池の対向容量比とは?利用容量とは?電池設計の基礎
CC充電とCCCV充電 定電流充電と定電流定電圧充電は同じもの??
バッテリー記載のCCAとは?【バイク用バッテリー】
【大きいほど低抵抗?】リチウムイオン電池の容量と内部抵抗の関係
【内部抵抗の計算】リチウムイオン電池の内部抵抗と反応面積から予想してみよう!
【リチウムイオン電池の接触抵抗低減】Al箔やCu箔の接触抵抗を下げる方法
リチウムイオン電池のドライアップとは?
電動ドライバー用バッテリーの特徴【リチウムイオン電池と二カド電池の違い】
リチウムイオン電池とアルカリ電池の違いは?
リチウムイオンバッテリーが寒さに弱い理由は?【スマホ用バッテリー】
リチウムイオン電池の特徴まとめ

HOME プロフィール お問い合わせ