【電池設計の基礎】電池設計シートを作ろう!1

【電池設計の基礎】電池設計シートを作ろう!1 容量の設計

 

スマホ向けのバッテリーや電気自動車向けバッテリーを始めとしたリチウムイオン電池において、更なる高容量化に向けて、各企業で様々な研究開発が進められています。

 

例えば、スマホバッテリーの容量として、Capacity:10000mAhなどの記載が電池にあると思いますが、この容量自体は具体的にどのように決められているのでしょうか?

 

電池の容量の計算方法の概要はこちらで解説していますが、こちらのページでは電池設計シートと呼ばれる電池の具体的な構成から電池の容量や質量、体積などを見積もるシートの作成方法(Excel使用)について解説しています。

 

 

・電池設計シートを作ろう!1  正極の容量の設計に関する項目

 

・電池設計シートを作ろう!1  負極の容量の設計に関する項目

 

・電池設計シートを作ろう!1  電池の容量を計算しよう!

 

というテーマで解説しています。

 

 

 

電池設計シートを作ろう!1  正極の容量の設計に関する項目

電気自動車向け電池などにはラミネート型電池を採用している企業様が多いです。

 

そして、ラミネート型電池の場合、積層式のエレメントにより電池が作製されていることが多く、また設計シートの基礎を学ぶのにわかりやすいため、積層式の場合の電池設計(容量の設計)について考えていきましょう。

 

まず、正極に使用する材料、組成を考えていきましょう。

 

正極活物質にコバルト酸リチウム、導電助剤にケッチェンブラック、バインダーにPvDFを使用するとし、その組成が90:5:5であるとします。

 

ここでコバルト酸リチウムの理論容量は274mAh/gですが、理論容量のすべてを使用すると充電時に結晶構造が崩壊し危険な状態となるため、理論容量の半分程度の130mAh/gを使用するとします。

 

この130mAhのことを正極の利用容量と呼びます。

 

次に、不可逆容量を入力します。不可逆容量は主に正極では0と考えてよいため、0とします。

 

さらに、正極の基材(アルミ)の上に上記の合剤を塗工、乾燥していきますが、容量に関するパラメータとしては、塗工部の大きさ、塗工質量(質量と重量の違いはこちらで解説しています)があります。

 

大きさは150mm×100mmとし、塗工質量は2g/100cm2としましょう。

 

ここで、負極の利用容量を計算しやすくするために、100cm2あたりの初回充電時に正極から負極へ移動する電気量を計算しておきましょう。

 

計算式は100cm2あたりの容量(正極)=活物質の割合(0.9)×正極活物質の利用容量(130mAh/g)×幅(縦:150mm)×幅(横:100mm)÷単位調整(10000)×塗工質量(2g/100cm2))

 

最後に1エレメントあたりの電極枚数を入力しておきましょう。

 

 

 

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電池設計シートを作ろう!1  負極の容量の設計に関する項目

 

まず、負極に使用する材料、組成を考えていきましょう。

 

負極活物質に黒鉛、バインダーにPvDFを使用するとし、その組成が90:5であるとします。

 

ここで黒鉛の理論容量は372mAh/gですが、理論容量のすべてを使用すると低温時の充電時に電析(Li金属の析出)がおき、電池として機能しなくなる可能性があるため、若干余裕をもたせた300mAh/gを利用するとします。

 

この300mAhのことを負極の利用容量と呼びます。

 

次に、不可逆容量を入力します。

 

不可逆容量とは黒鉛負極を使用し、初回充電時にSEI被膜が形成される際の使用できなくなるLiイオンに対応する電気量のことを指します。

 

不可逆容量は主に材料メーカー様から頂いた値を使用するか、実際に三電極法によるビーカーセルでの単極の試験により、測定した値を使用しましょう。

 

今回は50mAh/gとします。

 

さらに、負極の基材(銅)の上に上記の合剤を塗工、乾燥していきますが、正極と同様に容量に関するパラメータとしては、塗工部の大きさ、塗工質量(質量と重量の違いはこちらで解説しています)があります。

 

イメージしやすいよう大きさは150mm×100mmとします(本来は電析が起こらないように負極の方が若干大きく作られます。)

 

ここで、負極の利用容量を指定しているため、負極の塗工質量は自動的に決まります。

 

正極から入る電気量(100cm2あたり)=234mAh=活物質の割合(0.9)×(負極の利用容量(300mAh/g) + 不可逆容量(50mAh/g)))×幅(縦:150mm)×幅(横:100mm)÷単位調整(10000)×塗工質量(x g/100cm2)の関係からxを求めますと、0.74g/100cm2となります。

 

負極の電極枚数は正極より1枚多くなるため(負極が再外層に位置していないと電析が起こるため)、正極枚数10+1=11枚となります。

 

 

 

ここまでで、正極、負極の容量に関する設計のパラメータの指定は終了です。

 

最後に電池とした時の容量を計算してみましょう。

 

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電池設計シートを作ろう!1  電池の容量を計算しよう!

 

負極の利用容量と塗工質量が計算されましたので、最後に電池の容量を計算していきましょう。

 

正極の利用容量から計算すると、負極の不可逆容量を含んだ値となり放電容量でなく初回の充電電気量を算出してしまうので、気を付けましょう。

 

また、今回はイメージしやすいため、正極と負極の塗工面積を統一していますが、実際は負極の面積の方を若干大きくするため、対向面積として正極の塗工幅を使用することに気を付けましょう

 

活物質の割合(0.9)×負極利用容量(300mAh/g)×塗工質量(0.74g/100cm2)×幅(縦:150mm)×幅(横:100mm)÷単位調整(10000)=電極片面の容量=279mAh となります。

 

電極の両面に塗工するため、電極一枚当たりの容量≒557mAhとなります。

 

エレメントを構成する電極が正極:10枚、負極:11枚だと対抗する部分が11セットできるため(正極1枚、負極2枚のエレメントをイメージすると対向部分が負極の枚数と同じとわかると思います)、エレメントの容量=557mAh×11枚/1000=6.13Ahとなります。

 

さらに、電池はこのエレメントが2個により構成されるとすると、12.3Ahの容量の電池が出来る計算となります。

 

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