リチウムイオン電池の正極活物質とコバルト酸リチウムの反応と特徴

リチウムイオン電池の正極活物質とコバルト酸リチウムの反応と特徴

 

スマホ向けのバッテリーや電気自動車向けバッテリーを始めとしたリチウムイオン電池において、更なる高容量化、高電圧化、高エネルギー密度化に向けて、各企業で様々な研究開発が進められています。

 

このリチウムイオン電池の容量やエネルギー密度の設計を行う際、電池設計シートと呼ばれるフォーマットを用いて、容量やエネルギー密度の計算を行います。(※電池の容量の計算方法の概要はこちらで解説しています)

 

そして、容量や電圧、エネルギー密度に大きく関わる電池の構成として、活物質の種類が挙げられます。

 

このページでは、

 

・リチウムイオン電池における正極活物質の位置づけ

 

・正極活物質の種類

 

・代表的な正極活物質であるコバルト酸リチウムの反応と特徴

 

について解説しています。

 

 

リチウムイオン電池における正極活物質の位置づけ

リチウムイオン電池の構成を簡単に説明します。

 

リチウムイオン電池は、正極、負極、セパレータ、電解液、ケース等から構成され、以下のように構成されます。

 

ここで、正極は反応するのに必要不可欠なLiイオンの供給源と言えます。

 

さらに正極は、電気を集めるための集電箔、直接反応に関わる正極活物質、電子伝導性を高める導電助剤、箔に活物質などを結着させるためのバインダーなどから構成されます。

 

ここで、電池の容量電池作動時の電圧、エネルギー密度、安全性、コストなどの電池に求められるパラメータに大きく関わるものに正極活物質が挙げられます。

 

この正極活物質は現在市販されている電池においても数種類ほどあり、上にあげた電池の求められるパラメータの特性が異なります。

 

下のイメージ図は、代表的な正極活物質であるコバルト酸リチウムを使用したリチウムイオン電池のモデルです。

 

 

 

 

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次に代表的な正極活物質の種類について解説していきます。

 

正極活物質の種類

現在市販されているリチウムイオン電池の正極活物質には

 

・コバルト酸リチウム(LiCoO2)
・マンガン酸リチウム(LiMn2O4)
・リン酸鉄リチウム(LiFePO4)
・三元系
 
等が挙げられます。

 

また、これらの活物質をブレンドして使用する場合もあります。

 

 

コバルト酸リチウムの反応と特徴

コバルト酸リチウムの反応、作動電位

 

コバルト酸リチウムは、充放電に伴いLiイオンがコバルト酸リチウムの層間に脱挿入されること(インターカレーション反応)で反応が進み、可逆的に使用することができます。

 

作動電位が高く、放電時の平均値(平均作動電位)は3.7 V vs Li+/Li という値を示します。

 

放電時にコバルト酸リチウムの層間にLiイオンが挿入されると(上反式のxの値が減少)、コバルトの酸化数が4+→3+へ還元されます。

 

このCo4+/Co3+の酸化還元電位が高いことが、高い作動電位と大きく関わっています。
(詳しい説明は物質の軌道の影響など複雑な反応によるため割愛させて頂きます。)

 

放電曲線は以下のように、緩やかな傾斜があり、Liイオンがコバルト酸リチウム内に挿入され満たされると、それ以上入らないため抵抗が大きくなり、電位が急激に落ちます。

 


三電極法により溶液系で正極のみや負極のみの特性を測定することができます)

 

 

コバルト酸リチウムの容量

 

理論容量274mAh/gですが、実際に使用できる容量は140〜150mAh/g程度が目安です。

 

これは、コバルト酸リチウムの結晶構造は層状構造であり、使用する容量を増やし過ぎる、つまりLiイオンが多く引き抜かれると結晶構造が保てなくなり、壊れてしまうためです。

 

安定に使用できる容量は理論容量に対して、現行では0.44程度が目安となります。

 

満充電時の正極電位は4.2V vs Li+/Li程度であり、電池として組んだ時の満充電電圧は4.2〜4.25 V 程度に設定する(負極にグラファイト使用時)ことが一般的です。

 

 

製造の容易さ

 

また、製造が容易であることも活物質として採用されていることの一つです。

 

簡単に合成方法を説明しますと、炭酸リチウムLi2Co3と酸化コバルトCo3O4を混ぜ、550℃前後で仮焼成後に、850℃で焼成することで合成できます。

 

この条件ですと、混合物の量的関係をほぼ保ち、狙った通りの組成に合成できるという特徴があります。

 

 

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コバルト酸リチウムの課題と使用時の注意点

過充電による結晶構造の崩壊

 

上述させて頂きましたように、充電時にコバルト酸リチウムからLiイオンが引き抜かれる時、引き抜かれ過ぎると(過充電してしまった場合)コバルト酸リチウムの結晶構造が壊れてしまうことです。

 

結晶構造が壊れると可逆的に充放電ができない、つまり電池として機能しなくなってしまいます。

 

さらに、結晶構造が壊れると以下の反応が起こる、つまり酸素を放出します。

 

 

 

 

 

過充電時に結晶構造が壊れると上述しましたが、この時は正極の電位が急激に上がるため電解液が酸化分解され熱が発生します。

 

そして、電池温度が上昇することで負極と電解液の反応が発生しさらに電池温度上昇に繋がります。

 

さらに結晶構造が壊れることで発生した酸素との反応が起き、、、様々な反応が絡み合い熱暴走につながる可能性があるのです。

 

通常はセパレータが熱に反応することでシャットダウン機能が働いたり、システムにより熱暴走を止める設計となっているのですが、発熱速度が大きかったり、システム自体がうまく働かない場合もあり、事故につながるケースがあります。

 

使用時には、対応していない充電器を使用しないなど、過充電にならないように取扱いに注意しましょうね。

 

 

熱安定性が低いこと

 

また、コバルト酸リチウムは熱的特性が低いことも課題の一つです

 

満充電や過充電状態になり、Liイオンが多く引き抜かれている状態ですと、とくに熱安定性が下がります。

 

目安としては、200℃付近から分解されはじめ上述の反応が起こります。

 

コバルトの一部を他の金属、例えばニッケルやマンガンに置き換える事で、高電圧化かつ熱安定性を向上させる研究などが報告されています。

 

マンガン酸リチウムはコバルト酸リチウムよりも熱的特性が若干高く、さらにオリビン型構造を有するリン酸鉄リチウムはさらに熱的特性を含めた安全性が高い材料です。

 

 

リン酸鉄リチウム等よりサイクル特性が劣ること

 

また、上述のように結晶構造の安定性がリン酸鉄リチウムなどよりも低いことも課題の一つです。

 

充放電により、リチウムイオンの脱挿入に伴い層間距離の膨張収縮が起こります。

 

つまり、サイクルを繰り返すと層間の膨張収縮が繰り返されるために、活物質間や活物質と導電助剤間、箔と活物質間の剥離が起き、内部抵抗の上昇につながります。

 

 

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