【リチウムイオン電池の解析】ラマン分光法とは?測定原理と得られる情報(コピー)

【リチウムイオン電池の解析】ラマン分光法とは?測定原理と得られる情報

 

リチウムイオン電池の正極活物質や負極活物質、バインダーなどを始めとした有機・無機材料の結晶性を評価する場合や初期と劣化後の材料の結晶性の違いからその劣化状態(SOH)を評価する方法の一つににラマン分光法という解析手法があります。

 

こちらのページでは、

 

・ラマン分光法とは?測定原理と得られる情報

 

・ラマン分光法における活性の条件(ラマン活性・ラマン不活性)

 

・リチウムイオン電池におけるラマン分光法の使用方法概要

 

というテーマで解説しています。

 

 

ラマン分光法とは?測定原理と得られる情報

 

ラマン分光法の測定の仕組みは以下の通りです。

 

レーザー発振器から出るレーザー等の光を試料に照射した場合、光は試料を透過するか、吸収されるか、散乱されます。

 

ここで、ラマン分光法で、試料に光をあてその光の散乱の状態を解析することで、試料の元素や結晶性などの物性を評価することが可能です。

 

散乱光はレイリー散乱光とラマン散乱光に分けられます。レイリー散乱光とラマン散乱光の違いは前者は試料に当たった光が180度向きを変える散乱光のことを指し、後者は試料分子とエネルギー交換をしつつ、向きが変化し散乱されるもののことを指します。

 

ちなみに、レイリー散乱は弾性散乱、ラマン散乱は非弾性散乱とよぶこともあります(弾性衝突と非弾性衝突のイメージと同じです)。

 

ラマン散乱では物質とのエネルギーのやりとりがあり、この値は物質によって固有であるために物質の同定ができます。これがラマン分光法の測定原理(仕組み)といえます。

 

 

つまり、ラマン散乱光とは分子が光から受け取ったエネルギー分(もしくは出した分)だけ、入射光よりもエネルギーが低く(もしくは高く)なるのです。

 

エネルギーが低くなった際のラマン散乱光のことをストークス線、エネルギーが高くなった際のラマン散乱光のことをアンチストークス線と呼びます。

 

以下がストークス線のイメージ図です。ストークス線では、照射した物質にエネルギーを与え、自身(電磁波)のエネルギーが低くなり、色も変化します

 

 

さらに以下がアンチストークス線(反ストークス線)のイメージ図です。アンチストークス線(反ストークス線)では、照射した物質からエネルギーを受け取り、自身(電磁波)のエネルギーが高くなり、色も変化します

 

 

よって、入射光よりもエネルギー − ラマン散乱光のエネルギー = 分子が受け取る(もしくは放出した)エネルギーという式が成り立ちます。このとき物質とのエネルギーの交換を行っています。

 

分子の振動エネルギーの大きさが元素や化学結合状態により固有の値を持っているため、分子構造の同定を行うことが出来ます。これがラマン分光法の測定原理(メカニズム)です。

 

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ラマン分光法における活性の条件(ラマン活性・ラマン不活性)

 

ラマン分光法にて測定しやすい、またはしにくい・できない分子構造、振動モードがあります。ラマン分光法によって測定できる分子運動は対称伸縮運動であり、逆に測定できない分子運動は逆対称伸縮運動です。

 

ラマン分光法によって測定可能なことをラマン活性と表現し、測定できないことをラマン不活性と表現します。

 

例えば、C=C結合などの同じ元素からなるものは一般的にラマン散乱光が出やすい傾向があります。

 

逆にC-H結合やC-O-C結合などはラマンでなく、IR(赤外分校法)を用いるとピークが良く出る傾向にあります。

 

これは、ラマン分光では、分子内の電子の分布が変化する際に、入射光とのエネルギーのやりとりが行うことが出来るためです。

 

 

 

ラマン分光法では測定できない物質では、IR(赤外分校法)では測定しやすいです。またラマン分光法とIRでは、その逆の性質もあり、お互いの足りない部分を補える測定方法であり、一つの試料に対して両分析にかけることも多いです。

 

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リチウムイオン電池におけるラマン分光法の使用方法概要

リチウムイオン電池におけるラマン分光法の使用方法としては、上述のように

 

・正極活物質(正極材)、導電助剤や負極活物質(負極材)、バインダーなどの結晶性の評価

 

・結晶性の違いからSEM-EDXのように元素マッピングに使用(例えば正極合剤の活物質、導電助剤、バインダーの分散状態の把握のため等)

 

・初期と劣化後の電極中の各材料(正極活物質等)の結晶性の変化から劣化状態(SOH)の解析

 

他には、充放電時Liイオンの脱挿入により活物質の結晶化度が変化の測定により、各活物質の充電状態の解析にも使用されます。

 

つまり、結晶性、結晶化度の違いに着目している項目に対してラマン分光法は相性が良いといえます

 

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