リチウムイオン電池の外部短絡試験とは?

外部短絡試験とは?電池の安全性試験

 

最近では、リチウムイオン電池の発火事故なども多く発生し、電池の安全性への関心がみなさん高まっているかと思います。

 

代表的な安全性試験としては、過充電試験、外部短絡試験、過放電試験内部短絡試験などが挙げられ、こちらのページではリチウムイオン電池の外部短絡試験に関する

 

・外部短絡試験とは?

 

・外部短絡試験の方法

 

・外部短絡試験の結果例

 

というテーマでついて解説します。

 

 

外部短絡試験とは?

電池設計において安全性も重要なパラメータの一つです。

 

電池の安全性試験の中でも「外部短絡試験」と呼ばれる外部短絡に対する耐性を評価する試験があります。

 

外部短絡試験とは、言葉の通り電池の+端子と−端子を短絡(ショート)させた時の電池の発熱挙動や破裂発火の有無を評価する試験といえます(短絡の詳細はこちらで解説しています。)

 

電池にうっかり金属部材等を落として短絡させてしまった状態を模擬した試験です。

 

外部短絡させると短絡電流により電池が高温になり、膨れたり、程度が大きい場合は破裂・発火に至る場合もあります。

 

そのため、外部短絡に対する耐性も安全性全般の中でも重要な耐性の一つと言えるでしょう。

 

関連記事

電池の安全性試験の位置づけ
短絡とは?短絡させないための対策
過充電試験とは?
過放電試験とは?
内部短絡試験とは?
リチウムイオン電池の発火時の対処方法 水をかけても大丈夫?

 

 

外部短絡試験の方法

 

外部短絡に対する耐性を評価する外部短絡試験の内容は、各認証機関や電池を採取製品に組み込むメーカ−の要求により内容やその厳しさに程度の差があります。

 

その中でも試験に使用する電池や試験方法の一般的な例を下記で解説しています。

 

 

@評価する電池の準備

 
過充電試験のページでも用いた以下のような一般的なリチウムイオン電池を使用するとしましょう。

 

正極活物質にコバルト酸リチウム負極活物質に黒鉛電解液に通常の有機系電解液、外装材にラミネート材を用いた容量が10Ah(10000mAh)の電池を評価するとします。

 

通常使用時の充電上限電圧は4.2Vと設定されているとして、4.2V ,1C CCCV充電 で 3時間充電することで満充電(SOC100%)にしたとします。

 

この電池を外部短絡試験にかけます。

 

 

A外部短絡を行う装置、測定する装置の準備

 

こちらも過充電を始めとしました他の安全性試験同様、大前提としまして、万が一電池が破裂・発火したとしても大丈夫な場所で試験を行いましょう。

 

外部抵抗と電池の内部抵抗を含めた抵抗全体が5mΩとなる外部短絡試験を行うとします。

 

スイッチ、電池、外部抵抗、シャント抵抗(通電電流測定用の抵抗)を準備し、以下のよう接続します。

 

 

 

 

そして、解析時に必要な外部短絡時の通電電流や電池の電圧、温度を測定するためのデータロガーを準備しましょう。

 

ロガーで電流や電圧を測定するための電圧計測線や温度を測定するための熱電対を準備することも忘れないようにしましょう。

 

上図のようセットできましたら試験開始です。

 

 

 B試験の条件例

 

上述の通り、過充電試験の試験条件は認証機関により様々であり、厳しめの条件である外部抵抗と電池の内部抵抗を合わせた合計が5mΩである外部短絡試験を25度下で行うとします。

 

満充電状態から5mΩ外部短絡試験をスイッチをONにして開始します。

 

試験終了の条件は、熱暴走が起こるか、熱暴走が起こらず温度上昇が収まったところで試験を終了するとしましょう。

 

 

関連記事

電池の安全性試験の位置づけと過充電試験
コバルト酸リチウムの反応と特徴
黒鉛の反応と特徴
電解液(溶媒)の材料化学
1C、2Cとは何?
電池の内部抵抗とは?
充電上限電圧とは?
CCCV充電とは?
シャント抵抗とは?(通電電流測定用の抵抗)
短絡とは?短絡させないための対策

 

 

外部短絡試験の結果例

 

外部短絡試験の結果例@(セパレータのシャットダウン機能が作動しなかった場合)

 

外部短絡試験が開始すると同時に短絡電流が流れます。

 

オームの法則により、V=IRの計算を行うと、4.2= I×0.005より、I=840Aとなります。

 

つまり、通電開始時は840Aという大きい電流が流れることになり、今回は抵抗値が5mΩという値と仮定しましたが、抵抗値が大きければその短絡電流値が小さくなり試験条件としては緩くなります。

 

この時の発熱エネルギーはI^2 Rで表され、この自己発熱により電池の温度が大きく上昇していきます。
(初期値ではW = 840 × 840 × 0.005 = 3528Wが瞬間的に発生)

 

大きい電流が流れるということは容量もすぐに減るため、SOC-OCV曲線よりSOCが減る側、つまり電圧が下がっていき、それに応じて通電電流も時間経過とともに小さくなります。

 

その影響だけでなく、通常電池温度が上昇するとセパレータのシャットダウン機能が働き、抵抗が上昇することで通電電流が絞られていきます。

 

しかし、発熱速度の方が大きく、熱暴走に至るケースもあり、下イメージ図では、シャットダウンがうまく作動せずに熱暴走に至った場合の例を示しました。

 

 

 

 

外部短絡試験の結果例A(セパレータのシャットダウン機能が作動した場合)

 

逆に、セパレータのシャットダウン機能がうまく作動した場合は下のように温度がある地点で折り返します。
 
過充電試験や他の安全性試験と同様に、折り返し温度が100℃以上となり電解液が沸騰、蒸気が発生のみで反応が収まる(熱暴走が起こらない)場合もあります。

 

ラミネート電池では上記ケースなどの異常時にガスが発生した場合は、シール部が破れ内圧が下がることで破裂を防ぐ機構になっています。

 

また、ラミネートでない缶ケースの場合は、内圧が上昇しないように電池に安全弁と呼ばれるある一定の圧力がかかると開く弁を設け、これが作動することで破裂を防ぐ機構をとっています。

 

 
外部短絡試験における判定基準も各メーカ−や認証機関によって様々ですが、破裂・発火なきことを合格条件としているところが多いでしょう。

 

 

関連記事

電池の内部抵抗とは?
オームの法則とは?
セパレータのシャットダウン機能とは?
容量とは?
SOC-OCV曲線とは?
電池の自己発熱とは?
短絡とは?短絡させないための対策
過充電試験とは?
過放電試験とは?
内部短絡試験とは?
リチウムイオン電池の発火時の対処方法 水をかけても大丈夫?

 

 


【記事作成者募集中】


【募集】記事作成者募集


いつも当サイトへご訪問、ご閲覧頂き誠にありがとうございます。


当サイトでは、電池の役に立つ知識から、電池の研究・開発に役立つ学術知識について解説しています。


学術知識では、電気化学や統計学、Excelの使用方法、電池の材料化学などを主に解説しています。


2018年現在おかげさまで、月数万アクセス以上をご閲覧いただけるようになりましたが、
さらに有益な情報、詳しい情報をお届けするためには、管理人、副管理人では、
カバーしきれない分野もあり(例えば高分子化学等)、現在記事作成者の募集をしています


もちろん現在私達が解説している分野でも、さらに詳しく書ける!という方がいらっしゃいましたら、
気軽にこちらまで連絡いただければ幸いです


自分の知識を活かし情報提供することでの、社会への貢献、自己実現を一緒に行ってみませんか(^_^)/?


お問い合わせはこちらにお願いいたします。


【記事の内容例】


・身近な乾電池やモバイルバッテリーに関する情報


・電気化学の知識(現在記載していない内容)


・統計学の知識(現在記載していない内容)


・化学工学の知識(現在記載していない内容)


・電池の材料化学の知識(現在記載していない内容)


などなど募集しています。


興味がある方はお気軽に、まずはこちらにご一報ください



リチウムイオン電池の外部短絡試験とは? 関連ページ

リチウムイオン電池の正極活物質とコバルト酸リチウムの反応と特徴
【容量の算出】コバルト酸リチウムの理論容量を算出する方法
リン酸鉄リチウム(LFP)の反応と特徴 Li-Fe(リチウムフェライト)電池とは?鉛蓄電池の置き換えに適している?
【容量の算出】マンガン酸リチウムの理論容量を算出する方法
リン酸鉄リチウム(LFP)の合成方法
【容量の算出】リン酸鉄リチウムの理論容量を算出する方法
マンガン酸リチウムの反応と特徴
リチウムイオン電池における導電助剤の位置づけ VGCF(気相成長炭素)の特徴
正極の電極構造
黒鉛の反応と特徴
難黒鉛化炭素の反応と特徴
易黒鉛化炭素の反応と特徴
チタン酸リチウムの反応と特徴
電解液(溶媒)の材料化学
電解液(溶媒)に入れる添加剤の役割と種類(VC,FECなど)
電解液(塩)の材料化学 なぜ市販品ではLiPF6が採用されているか?
リチウムイオン電池におけるセパレータの位置づけと材料化学
リチウムイオン電池におけるバインダーの位置づけと材料化学
【リチウムイオン電池材料の評価】セパレータの透気度とは?
リチウムイオン電池のセパレータに求められる特性
リチウムイオン電池の寿命予測方法(ルート則)
リチウムイオン電池の寿命予測方法(内部抵抗の上昇の予測)
リチウムイオン電池の劣化後の放電曲線(作動電圧)の予測方法
【アレニウスの式使用問題演習】リチウムイオン電池の寿命予測をExcelで行ってみよう!
【続アレニウスの式使用問題演習】リチウムイオン電池の寿命予測をExcelで行ってみよう!その2
【サイクル試験の寿命予測、劣化診断】リチウムイオン電池の寿命予測(サイクル試験)をExcelで行ってみよう!
リチウムイオン電池の寿命予測方法 ルート則とべき乗則
【リチウムイオン電池の解析】XRDとは?測定原理と得られる情報、X線回折装置
【リチウムイオン電池の解析】XRDなどに使用されるKα線とは?
【リチウムイオン電池の解析】XPSとは?測定原理と得られる情報
【リチウムイオン電池の解析】ラマン分光法とは?測定原理と得られる情報
【リチウムイオン電池の解析】IR(赤外分光法)とは??測定原理と得られる情報
【リチウムイオン電池の解析】ICP-MS(ICP質量分析法)とは??測定原理と得られる情報
【リチウムイオン電池の解析】SEMとは?測定原理と得られる情報
【解析関連用語】insituとはどういう意味?読み方は?【リチウムイオン電池の解析】
【演習問題】ランベルトベールの法則と計算・演習問題【リチウムイオン電池の解析】
DSCとは?測定原理と得られる情報は?
ヘンリーの吸着等温式とは?導出過程は?
ラングミュア(langmuir)の吸着等温式とは?導出過程は?
化学吸着と物理吸着の違いは?
【演習問題】比表面積を求める方法【BET吸着_ラングミュア吸着】
【比表面積の計算】BET吸着とは?導出過程は?【リチウムイオン電池の解析】
【材料力学】弾性係数とは?求め方と使用方法【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】ポアソン比とは?求め方と使用方法【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】応力-ひずみ線図とは?【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】材料のたわみ計算方法は?断面二次モーメント使用【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】断面二次モーメントとは?断面係数とは?【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】剥離強度とは?電極の剥離強度【リチウムイオン電池の構造解析】
電池の安全性試験の種類
電池の安全性試験の位置づけと過充電試験
過充電試験の反応詳細
リチウムイオン電池の内部短絡試験とは?
リチウムイオン電池の釘刺し試験とは?
リチウムイオン電池の振動試験とは?
リチウムイオン電池の熱衝撃試験とは?
リチウムイオン電池の過放電試験とは?
【演習問題】表面張力とは?原理と計算方法【リチウムイオン電池パックの接着】
接着剤が付く理由は?アンカー効果とは?【リチウムイオン電池パックの接着】
弾性接着剤とは?特徴は?シリコーンと変成シリコーンの違いは?【リチウムイオン電池パックの接着】
ホットメルト系接着剤とは?特徴は?【リチウムイオン電池パックの接着】
PPやPEは接着が難しい?理由と解決策は?【リチウムイオン電池パックの接着】
エポキシ接着剤とは?特徴は?【リチウムイオン電池パックの接着】
接着と粘着、接着剤と粘着剤の違いは?
接着剤における1液型と2液型(1液系と2液系)の違いは?
【角型電池】リチウムイオン電池における安全弁とは?
振動試験における対数掃引とは?直線掃引との違いは?
振動試験時の共振とは?【リチウムイオン電池の安全性】
【リチウムイオン電池の熱衝撃試験】熱膨張係数の違いによる応力の計算方法
【演習問題】金属の電気抵抗と温度の関係性 温度が上がると抵抗も上がる?
図積分とは?Excelで図積分を行ってみよう!
多孔度とは何?多孔度の計算方法は?電極の多孔度と電池性能の関係
正極にはなぜAl箔を使用?負極はなぜCu箔を使用?
真密度、見かけ密度(粒子密度)、タップ密度、嵩密度の違いは?
負極のCu箔の作製方法 圧延銅箔
負極のCu箔の作製方法 電解銅箔
【リチウムイオン電池の水分測定】カールフィッシャー法の原理と測定方法
【演習問題】細孔径を求める方法【水銀圧入法】
mmHgとPa,atmを変換、計算する方法【リチウムイオン電池の解析】
蒸着とは?CVDとPVDの違いは?
【次世代電池】全固体電池とは?反応や特徴、メリット、デメリットは?
【リチウムイオン電池の材料】シリコン系負極の反応と特徴、メリット、デメリットは?【次世代電池の材料】
【全固体電池】ガラスとは何か?ガラス転移点(TG)oha全固体電池とは?反応や特徴、メリット、デメリットは?(コピー)
【次世代電池】イオン液体とは?反応や特徴、メリット、デメリット(課題)は?
プレドープ、プレドープ電池とは?リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタとの違いは?
プレドープ、プレドープ電池とは?リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタとの違いは?(コピー)
太陽電池の発電の原理とは?n型、p型発電の原理は?

HOME プロフィール お問い合わせ