易黒鉛化炭素の反応と特徴

易黒鉛化炭素の反応と特徴

 

このページでは負極活物質として使用した場合の、

 

・易黒鉛化炭素の反応と特徴
・易黒鉛化炭素の充放電曲線

 

について解説しています。

 

 

易黒鉛化炭素の反応と特徴

 

易黒鉛化炭素とは、熱処理温度を上げると黒鉛構造に近づく炭素のことです。別名、ソフトカーボンと呼びます。

 

難黒鉛化炭素は、熱処理温度を高くしても黒鉛構造には近づきません。

 

熱処理温度により構造が大きく変化し、一般的には熱処理温度である1000℃〜1200℃付近で熱処理したものがリチウムイオン電池の負極活物質として使用されることが多いです。

 

・イメージとしては、黒鉛と難黒鉛化炭素の中間くらいの構造を有する負極活物質ということが出来ます。

 

・原料としてはピッチ系炭素や高分子を焼成して得られます。

 

 

 

参考として、黒鉛と難黒鉛化炭素の構造イメージも下に示します。

 

 

・熱処理温度で状態は変化しますが、黒鉛と同じような反応をする黒鉛類似積層部、ハードカーボンと同じような反応をする乱層構造部、非晶質部から構成されます。

 

また、結晶部のグラフェン層間距離はおおよそ0.34nm以上であり、結晶子枚数は数枚〜数十枚程度です。一般的に使用される品の密度は1.8g〜2.0g/cm3程度です。

 

・結晶部が少なく、かつ結晶の層間距離も広いため、黒鉛のように膨張収縮が起こらず、サイクル特性が良好です。焼成温度にもよりますが、サイクル特性は黒鉛と難黒鉛化炭素との中間程度と言えるでしょう

 

 

反応サイトは黒鉛より多いため、電荷移動抵抗を小さく出来、入出力特性が良好です。ただし、反応サイトが多い分、不可逆容量が大きくなります。こちらも熱処理温度により異なりますが、黒鉛と難黒鉛化炭素の中間程度と言えます。

 

・また、黒鉛ではグラフェン層の層間へのLiイオンの脱挿入が行われていました。

 

易黒鉛化炭素は難黒鉛化炭素同様に、結晶部のグラフェン層へのLiイオンの脱挿入に加えて、非晶質部(結晶子間の空隙)へ脱挿入されるため、全体としてみると黒鉛よりも脱挿入部位が大きくなります

 

そのため、単位質量当たりの理論的な容量は、黒鉛より大きくなる傾向にあります(熱処理や合成方法の関係で変動します)。ただし、反応サイトも多いため不可逆容量も大きい傾向があります。

 

関連記事

電池の充放電効率とは?
電池を長持ちさせる方法
黒鉛の反応と特徴
難黒鉛化炭素の反応と特徴
SOC-OCV曲線とは?
三電極法とは?

 

 

 

 

 易黒鉛化炭素の充放電曲線

 

・黒鉛負極では、完全放電時から充電を始め、Liイオンが挿入されると同時に急激に電位が低下しLi/Li+電位に近づいていきます。

 

これに対して難黒鉛化炭素や適切に熱処理された易黒鉛化炭素は作動電位に傾斜がつき、下記イメージ図のような曲線となります。

 

これは結晶構造を有する部分と部分と非晶質部分の両方を併せ持つため、外部からの何かしらの力が少しでも挿入が始まる部分と、外部からの何かしらの力が強くないと挿入が始まらない部分があるため、傾斜がつきます。

 

 

・上記のように作動電位に傾斜がつくため、システムでの電圧からのSOC検知が行いやすいメリットがあります(SOC-OCV曲線の説明はこちら)。

 

・また、非晶質部が多いため、黒鉛負極では使用できないPC電解液(ECよりも融点が低く、低温特性に優れる)も使用できます。熱処理温度を上げ、黒鉛化度が増した場合はLiイオン挿入時にPCが先に分解されてしまうため、PCは使用できません。

 

 

関連記事

電池の充放電効率とは?
電池を長持ちさせる方法
黒鉛の反応と特徴
易黒鉛化炭素の反応と特徴
SOC-OCV曲線とは?
三電極法とは?

 

 

 


【記事作成者募集中】


【募集】記事作成者募集


いつも当サイトへご訪問、ご閲覧頂き誠にありがとうございます。


当サイトでは、電池の役に立つ知識から、電池の研究・開発に役立つ学術知識について解説しています。


学術知識では、電気化学や統計学、Excelの使用方法、電池の材料化学などを主に解説しています。


2018年現在おかげさまで、月数万アクセス以上をご閲覧いただけるようになりましたが、
さらに有益な情報、詳しい情報をお届けするためには、管理人、副管理人では、
カバーしきれない分野もあり(例えば高分子化学等)、現在記事作成者の募集をしています


もちろん現在私達が解説している分野でも、さらに詳しく書ける!という方がいらっしゃいましたら、
気軽にこちらまで連絡いただければ幸いです


自分の知識を活かし情報提供することでの、社会への貢献、自己実現を一緒に行ってみませんか(^_^)/?


お問い合わせはこちらにお願いいたします。


【記事の内容例】


・身近な乾電池やモバイルバッテリーに関する情報


・電気化学の知識(現在記載していない内容)


・統計学の知識(現在記載していない内容)


・化学工学の知識(現在記載していない内容)


・電池の材料化学の知識(現在記載していない内容)


などなど募集しています。


興味がある方はお気軽に、まずはこちらにご一報ください



 

易黒鉛化炭素の反応と特徴 関連ページ

リチウムイオン電池の正極活物質とコバルト酸リチウムの反応と特徴
【容量の算出】コバルト酸リチウムの理論容量を算出する方法
リン酸鉄リチウム(LFP)の反応と特徴 Li-Fe(リチウムフェライト)電池とは?鉛蓄電池の置き換えに適している?
【容量の算出】マンガン酸リチウムの理論容量を算出する方法
リン酸鉄リチウム(LFP)の合成方法
【容量の算出】リン酸鉄リチウムの理論容量を算出する方法
マンガン酸リチウムの反応と特徴
リチウムイオン電池における導電助剤の位置づけ VGCF(気相成長炭素)の特徴
正極の電極構造
黒鉛の反応と特徴
難黒鉛化炭素の反応と特徴
チタン酸リチウムの反応と特徴
電解液(溶媒)の材料化学
電解液(溶媒)に入れる添加剤の役割と種類(VC,FECなど)
電解液(塩)の材料化学 なぜ市販品ではLiPF6が採用されているか?
リチウムイオン電池におけるセパレータの位置づけと材料化学
リチウムイオン電池におけるバインダーの位置づけと材料化学
【リチウムイオン電池材料の評価】セパレータの透気度とは?
リチウムイオン電池のセパレータに求められる特性
リチウムイオン電池の寿命予測方法(ルート則)
リチウムイオン電池の寿命予測方法(内部抵抗の上昇の予測)
リチウムイオン電池の劣化後の放電曲線(作動電圧)の予測方法
【アレニウスの式使用問題演習】リチウムイオン電池の寿命予測をExcelで行ってみよう!
【続アレニウスの式使用問題演習】リチウムイオン電池の寿命予測をExcelで行ってみよう!その2
【サイクル試験の寿命予測、劣化診断】リチウムイオン電池の寿命予測(サイクル試験)をExcelで行ってみよう!
リチウムイオン電池の寿命予測方法 ルート則とべき乗則
【リチウムイオン電池の解析】XRDとは?測定原理と得られる情報、X線回折装置
【リチウムイオン電池の解析】XRDなどに使用されるKα線とは?
【リチウムイオン電池の解析】XPSとは?測定原理と得られる情報
【リチウムイオン電池の解析】ラマン分光法とは?測定原理と得られる情報
【リチウムイオン電池の解析】IR(赤外分光法)とは??測定原理と得られる情報
【リチウムイオン電池の解析】ICP-MS(ICP質量分析法)とは??測定原理と得られる情報
【リチウムイオン電池の解析】SEMとは?測定原理と得られる情報
【解析関連用語】insituとはどういう意味?読み方は?【リチウムイオン電池の解析】
【演習問題】ランベルトベールの法則と計算・演習問題【リチウムイオン電池の解析】
DSCとは?測定原理と得られる情報は?
ヘンリーの吸着等温式とは?導出過程は?
ラングミュア(langmuir)の吸着等温式とは?導出過程は?
化学吸着と物理吸着の違いは?
【演習問題】比表面積を求める方法【BET吸着_ラングミュア吸着】
【比表面積の計算】BET吸着とは?導出過程は?【リチウムイオン電池の解析】
【材料力学】弾性係数とは?求め方と使用方法【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】ポアソン比とは?求め方と使用方法【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】応力-ひずみ線図とは?【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】材料のたわみ計算方法は?断面二次モーメント使用【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】断面二次モーメントとは?断面係数とは?【リチウムイオン電池の構造解析】
【材料力学】剥離強度とは?電極の剥離強度【リチウムイオン電池の構造解析】
電池の安全性試験の種類
電池の安全性試験の位置づけと過充電試験
過充電試験の反応詳細
リチウムイオン電池の外部短絡試験とは?
リチウムイオン電池の内部短絡試験とは?
リチウムイオン電池の釘刺し試験とは?
リチウムイオン電池の振動試験とは?
リチウムイオン電池の熱衝撃試験とは?
リチウムイオン電池の過放電試験とは?
【演習問題】表面張力とは?原理と計算方法【リチウムイオン電池パックの接着】
接着剤が付く理由は?アンカー効果とは?【リチウムイオン電池パックの接着】
弾性接着剤とは?特徴は?シリコーンと変成シリコーンの違いは?【リチウムイオン電池パックの接着】
ホットメルト系接着剤とは?特徴は?【リチウムイオン電池パックの接着】
PPやPEは接着が難しい?理由と解決策は?【リチウムイオン電池パックの接着】
エポキシ接着剤とは?特徴は?【リチウムイオン電池パックの接着】
接着と粘着、接着剤と粘着剤の違いは?
接着剤における1液型と2液型(1液系と2液系)の違いは?
【角型電池】リチウムイオン電池における安全弁とは?
振動試験における対数掃引とは?直線掃引との違いは?
振動試験時の共振とは?【リチウムイオン電池の安全性】
【リチウムイオン電池の熱衝撃試験】熱膨張係数の違いによる応力の計算方法
【演習問題】金属の電気抵抗と温度の関係性 温度が上がると抵抗も上がる?
図積分とは?Excelで図積分を行ってみよう!
多孔度とは何?多孔度の計算方法は?電極の多孔度と電池性能の関係
正極にはなぜAl箔を使用?負極はなぜCu箔を使用?
真密度、見かけ密度(粒子密度)、タップ密度、嵩密度の違いは?
負極のCu箔の作製方法 圧延銅箔
負極のCu箔の作製方法 電解銅箔
【リチウムイオン電池の水分測定】カールフィッシャー法の原理と測定方法
【演習問題】細孔径を求める方法【水銀圧入法】
mmHgとPa,atmを変換、計算する方法【リチウムイオン電池の解析】
蒸着とは?CVDとPVDの違いは?
【次世代電池】全固体電池とは?反応や特徴、メリット、デメリットは?
【リチウムイオン電池の材料】シリコン系負極の反応と特徴、メリット、デメリットは?【次世代電池の材料】
【全固体電池】ガラスとは何か?ガラス転移点(TG)oha全固体電池とは?反応や特徴、メリット、デメリットは?(コピー)
【次世代電池】イオン液体とは?反応や特徴、メリット、デメリット(課題)は?
プレドープ、プレドープ電池とは?リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタとの違いは?
プレドープ、プレドープ電池とは?リチウムイオン電池や電気二重層キャパシタとの違いは?(コピー)
太陽電池の発電の原理とは?n型、p型発電の原理は?

HOME プロフィール お問い合わせ