過充電試験の反応詳細

過充電試験の反応詳細

 

最近では、リチウムイオン電池の発火事故なども多く発生し、リチウムイオン電池の安全性への関心がみなさん高まっているかと思います。

 

中でも電池が過充電になる場合や外部からの圧迫により、異常状態、破裂・発火につながる場合があります。

 

こちらのページでは、過充電時にどのような反応が起き熱暴走に至るのかといった過充電時の反応の詳細について解説しています。

 

 

電池の安全性試験の位置づけと過充電試験

リチウムイオン電池などの安全性を評価するための試験として、安全性試験と呼ばれる試験があります。

 

リチウムイオン電池は電池に圧力を加え変形させたり、燃焼させたりすると破裂・発火に至る可能性があるものです。

 

そのため、安全性も電池設計における重要なパラメータの一つです。

 

そして、ある電池が一定の水準を超えた安全な電池かどうかを判断するために、電池の認証機関による安全性試験を行い、認証機関の水準を超えると電池に認証マークを入れることができます。

 

飲み物の特保マークのように、電池にも安全ですよといった意味を持つ認証マークが張られていた方がお客さんも安心ですし、より買いたくなりますよね?

 

そして、電池の安全性試験の中でも「過充電試験」と呼ばれる過充電に対する耐性を評価する試験があります。

 

過充電状態になると電池が高温になり、膨れたり、程度が大きい場合は破裂・発火に至る場合もあるため、過充電耐性は安全性全般の中でも重要な耐性の一つです。

 

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 過充電試験の方法

過充電耐性を評価する過充電試験の内容は、各認証機関や電池を採取製品に組み込むメーカ−の要求により内容やその厳しさに程度の差があります。

 

その中でも試験に使用する電池や試験方法の一般的な例を下記で解説しています。

 

 

@評価する電池の準備

 

正極活物質にコバルト酸リチウム負極活物質に黒鉛電解液に通常の有機系電解液、外装材にラミネート材を用いた容量が10Ah(10000mAh)の電池を評価するとします。

 

通常使用時の上限電圧は4.2Vと設定されているとして、4.2V ,1C CCCV充電 で 3時間充電することで満充電(SOC100%)にしたとします。

 

この電池を過充電試験にかけます。

 

 

A過充電を行う装置、測定する装置の準備

 

大前提としまして、万が一電池が破裂・発火したとしても大丈夫な場所で試験を行いましょう。

 

直流電源を用意して、直流電源と電池を電流線により接続します。

 

この時、電流線の間にシャント抵抗と呼ばれる電圧降下から電流値を算出できる測定器を入れておきます。

 

そして、解析時に必要な過充電時の通電電流や電池の電圧、温度を測定するためのデータロガーを準備しましょう。

 

ロガーで電流や電圧を測定するための電圧計測線や温度を測定するための熱電対を準備することも忘れないようにしましょう。

 

以下の図のようにセットしたら試験開始です。

 

 

 試験の条件例

 

上述の通り、過充電試験の試験条件は認証機関により様々です。

 

厳しめの条件として以下のような試験を行ったとします。

 

満充電状態から、1C 10V CCCV 充電を行い、熱暴走が起こるか、熱暴走が起こらず温度上昇が収まったところで試験を終了するとします。

 

 

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過充電試験の結果例

 

過充電試験の結果例@(セパレータのシャットダウン機能が作動しなかった場合)

 

過充電試験が開始され、正極活物質であるコバルト酸リチウムから通常安定に作動する範囲を超えて、Liイオンが引き抜かれ始めます。

 

1C程度の充電電流ですと、試験開始からおよそ1時間程度までは徐々に電圧が上がっていきます。

 

そして1時間程度経過すると、正極電位が上昇することで電解液が酸化分解され始め、電池が発熱し始めます。

 

さらにコバルト酸リチウムの結晶構造が崩壊することで放出される酸素との反応や負極と電解液の反応等、様々な発熱反応の相乗効果で急激な電池の温度上昇につながります。

 

ここで、温度が上昇するに伴いセパレータのシャットダウン機能と呼ばれる多孔質セパレータの孔が閉塞することで、電池の内部抵抗を急激に上げ、電池の反応、熱暴走を止める機能が働きます。

 

抵抗が急上昇するため、オームの法則より電圧が急激に上がり、10Vに到達、CVモードとなり電流が絞られます。

 

ただし、過充電などで電池の発熱速度があまりにも大きいとシャットダウン機能が間に合わずに熱暴走に至る場合があります。

 

下ではこのケースのデータ例を示しており、温度が急上昇し熱暴走に至って例を挙げています。

 

熱暴走となると、電池にもよりますが最高温度が数百度程度となり、破裂・発火に至るケースも少なくありません。
 
通常の電池では、過充電にならないようにシステムで止めるか、システムが故障しても大丈夫なように電池の安全性を高めるなど、各メーカーにより対応方法が異なります。
 
 

 

過充電試験の結果例A(セパレータのシャットダウン機能が作動した場合)

 

逆に、セパレータのシャットダウン機能がうまく作動した場合は下のように温度がある地点で折り返します

 

たとえば、ここで折り返し温度が100℃以上となり電解液が沸騰、蒸気が発生のみで反応が収まる(熱暴走が起こらない)場合もあります。

 

 

ラミネート電池では上記ケースなどの異常時にガスが発生した場合は、シール部が破れ内圧が下がることで破裂を防ぐ機構になっています。

 

また、ラミネートでない缶ケースの場合は、内圧が上昇しないように電池に安全弁と呼ばれるある一定の圧力がかかると開く弁を設け、これが作動することで破裂を防ぐ機構をとっています。

 

 

 

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