正極にはなぜAl箔を使用?負極はなぜCu箔を使用?

正極になぜAl箔を使用?負極にはなぜCu箔を使用?

 

スマホ向けのバッテリーや電気自動車向けバッテリーを始めとしたリチウムイオン電池において、更なる高容量化、高電圧化、高エネルギー密度化に向けて、各企業で様々な研究開発が進められています。

 

特に電気自動車(EV)用バッテリ−では高い出力特性が求められるため、特に内部抵抗の低減が求められ、
各電極に使用する基材の選定も大きく内部抵抗に影響します。

 

ただし、内部抵抗が下げられるからといってすぐに使用できなくなる材料では問題があり、使用する基材箔に正極:Al、負極:Cuが一般的に使用される理由について解説しています。

 

 

・正極ではなぜAl箔が使用されているのか?

 

・負極ではなぜCu箔が使用されているのか?

 

 

というテーマで解説しています。

 

 

正極になぜAl箔が使用されているのか?

正極は、集電箔と呼ばれる電気を集める箔の上に、活物質や導電助剤、バインダー、NMPを混練したスラリーを塗工、乾燥させることで作製されます。(溶剤系電極の場合)

 

そして、正極の集電箔にはAl箔が一般的に使用されます。

 

それではなぜAl箔が使用されているのでしょうか?理由を下記に解説します。

 

 

耐電解液性、耐酸化性などの耐性を持っていること

 

Al箔の表面はAl2O3の不働態である酸化被膜で覆われているため、耐電解液性、耐酸化性などの耐性を持っています。

 

そのため、長期間経っても腐食されにくいことが使用されている理由の一つです。

 

ただし、Al2O3被膜があることで合材との接触抵抗が上がっており、表面を荒らすことなどで接触抵抗を下げる対応をしています。

 

 

正極の作動電位の範囲でLi−Al合金を形成しないこと

 

リチウムイオン電池において、Alとの反応で懸念されるのはLi-Al合金の形成です。

 

電池の作動(充放電時)にLi-Al合金が形成されると、Liを消費するため急激な容量低下や集電箔のAlの溶出
につながり、電池として劣化が早く進んでしまいます。

 

 

 

 

ここで、正極の作動電位について簡単に解説します。

 

電池の端子電圧は正極の作動電位 − 負極の作動電位であり、使用する活物質にもよりますが電池の端子電圧の範囲は2 - 4V付近です。

 

そのため、設計にもよりますが、正極の作動電位はそれより高い3-4.2V vs Li+/Li付近です。

 

それに対して、上述のLi-Al合金の形成電位は 約0.6 V vs Li+/Liであるため、正極の作動電位の範囲外であるため、Li-Al合金の形成の心配がないことが、Al箔が使用されている理由の一つです。

 

 

 コストが安く、軽いこと

 

材質がAlであるため、安く、かつ軽い材料であることも、採用されている理由の一つです。

 

 

※またリチウムイオン電池において、内部抵抗の低減は重要であり、その中でもAl箔やCu箔の接触抵抗を下げることで内部抵抗を低減することができます(詳細はこちらにて解説しています)。

 

 

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負極になぜCu箔が使用されているのか?

正極同様に、負極は、集電箔と呼ばれる電気を集める箔の上に、活物質や増粘剤、バインダー、水を混練したスラリーを塗工、乾燥させることで作製されます。(水系電極の場合)

 

そして、負極の集電箔にはCu箔が一般的に使用されます。

 

それではなぜCu箔が使用されているのでしょうか?理由を下記に解説します。

 

 

耐電解液性、耐酸化性などの耐性を持っていること

 

正極と同様にCuも耐電解液性、耐酸化性などの耐性を持っているため、長期間経っても腐食されにくいことが使用されている理由の一つです。

 

また、Alよりかたい材料であるため、塗工時の箔の破れが起きにくく、またAl箔と比べてより薄い材料を使用することができます。

 

 

負極(黒鉛使用)の作動電位の範囲でLi−Al合金を形成するため、AlでないCuが使用

 

本来なら、コストが安く、軽い材料であるAl箔を負極にも使用することが好ましいと考えられています。

 

しかし、上述のようにリチウムイオン電池においてLi-Al合金の形成が電池容量の急激な劣化につながり、活物質に黒鉛を使用した負極の作動電位の範囲はこのLi-Al合金形成電位を含みます。

 

値にすると負極の作動電位は 0.1 〜 1.5V vs Li+/Li付近であり、Li-Al合金の形成電位は 約0.6 V vs Li+/Liです。

 

そのため、負極にAlを使用するとLi-Al合金を形成するため、他の耐性も兼ね備えたCuが選ばれています。

 

また、過放電時には、負極の電位がさらに上昇するため、標準電極電位が高く汎用的な材料であるCuが選ばれています。

 

ちなみに作動電位が1.55V vs Li+/Liと高い材料であるチタン酸リチウムを負極活物質として使用すれば、Al箔を使用することが可能です。
 

 

 コストが安いこと

 

材質がCuであるため、安く、汎用的であることも、採用されている理由の一つです。

 

Cu箔の作製方法(圧延銅箔)についてはこちらで解説しています。

 

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