水の電気分解の仕組み・反応式 陽極・陰極での反応式 水酸化ナトリウムを入れる理由は?

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水の電気分解の仕組み 実験における反応式 陽極・陰極での反応式

 

科学的な現象を理解するためには、科学に関する基礎知識を身につけておくことがとても重要です。

 

例えば、ある物質の「原子量・分子量・式量」や化学平衡などさまざま用語を理解しておくといいです。

 

中でも、化学反応の一種である電気分解とよばれるものがあります。

 

ここでは、電気分解の中でも「水の電気分解」に関する内容について解説していきます。

 

・水の電気分解とは?水の電気分解の反応式 陽極・陰極での反応式

 

・水の電気分解の反応は燃料電池発電の原理となっている(高校化学の範囲外)

 

というテーマで解説していきます。

 

 

水の電気分解とは?水の電気分解の実験と反応式 陽極・陰極での反応式

 

電気分解の仕組みの詳細はこちらで解説していますが、簡単に解説しますと電気分解とは物質に対して電気的なエネルギーを加えることで分解を起こすことといえます

 

電気分解の中でも、水の電気分解ではその実験方法も合わせて問題にされることが多いです。

 

以下に構成図を示します。

 

 

使用する電極

 

まず、電池などの直流電源と各電極をつなぎます。

 

電池におけるプラス(+)極を正極、電池のマイナス(-)極を負極と呼び、電池と正極とつなぐ電気分解槽の電極を陽極、もう一方を陰極と呼びます。

 

他の電気分解と同様に、基本的には電極に化学反応がおきにくい不活性電極が使用されます。材質はC(炭素)やPtなどです

 

水の電気分解の実験で使用する電解液

 

溶液にはH2OにNaOH(水酸化ナトリウム)を少量添加させたものを使用して、電気分解の実験を行うことが基本です。

 

NaOHを少量加えるのは、電解質を溶かすことで水溶液に電気が通るようにするためです。

 

以下の電離式により電離し、イオンになっています。

 

水溶液の電離式

 

水は H2O → H+ + OH- と電離しています。これらのイオンが陽極や陰極での反応に関与するのです。

 

水酸化ナトリウムも電離しており、 NaOH → Na+ + OH- となっています。
 

 

陽極での化学反応式

 

それでは、具体的に反応式を考えていきましょう。
水酸化物イオン(OH-)の電荷がマイナスであるため、それと陽極(+極)が引き合うようなイメージをすると覚えやすいです
(大学課程以降で学ぶ電気化学を学ぶ厳密には若干反応メカニズムは異なります(こちらで詳しく解説しています))。

 

結果として、水酸化物イオンが電子を放出し、酸素と水を生成する反応がおこります。このとき、酸素は液中から空気中に放出されます。
 
 

 

陰極での化学反応式(水素発生反応)

 

次に陰極での反応を考えていきましょう。

 

陽極と同様に考えていきましょう。

 

水素イオン(H+)の電荷がプラス(+)であるため、それと陰極(-極)が引き合うようなイメージをすると覚えやすいです
(大学課程以降で学ぶ電気化学を学ぶ厳密には若干反応メカニズムは異なります(こちらで詳しく解説しています))。

 

水素イオンが電子を受け取り、水素となって空気中の放出される反応が起こります。

 


ここで、Na+イオンはイオン化傾向が非常に大きく、H+よりも反応しにくいです。そのため、イオンの状態のまま反応せずに、溶液中にいます。

 

全反応式

 
陽極と陰極の反応を合わせたものが全反応式であり、以下の通りです。

 

 

 

これが電気分解の仕組み(原理)です。

 

電子の流れを見ると、陽極から電子を放出し、正極では電子を受け取り、負極からは電子が放出され、陰極に入っていくような流れです。これはどの電気分解の藩王でも基本的に同じです。

 

一つ一つ丁寧に覚えていきましょう。

 

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水の電気分解の反応は燃料電池発電の原理となっている(高校化学の範囲外)

 

このような水の電気分解の反応ですが、実は燃料電池(PEFC)とよばれる発電システムの発電原理そのものとなっています。

 

そのため、高校で学ぶ勉強もそのまま実際の研究開発に役立つことが多くあるのです。

 

勉強した内容が無駄になることはないので、一つ一つ楽しみながら学習していきましょう。

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