標準電極電位と金属の電子状態の関係
このページでは
・標準電極電位と金属の電子状態の関係
について解説しています。
標準電極電位と金属の電子状態
標準電極電位の標準とは、反応物質の活量が1であることを表しています。
そして、下記のような電子授受平衡(電気化学平衡)において、酸化体、還元体をまとめたものの活量を1と考えた場合の、つまりアノード反応、カソード反応が釣り合う場合の動作電極の電位を標準電極電位と呼びます
通常は標準水素電極(SHE)を基準に考えます。(※詳細はこちらで解説しています)
この標準電極電位と金属の電子状態は密接に関連しています。
金属は下図のように
@電子が詰まったエネルギー準位(電子エネルギーが低い方から電子は詰まっていきます。)
A電子が詰まっていない空のエネルギー準位
から構成されます。
@中で最も不安定な場所にいる(最もエネルギーが高い場所にいる)電子の準位のことをフェルミ準位(下図黄色部分)と呼びます。このフェルミ準位は真空を基準にしています。
フェルミ準位に対応する電位のことを標準電極電位(一般的にSHE基準)と呼びます。
また、このフェルミ準位付近にある電子のみが他の物質に移動することができ、
逆に他の物質から移動してくる電子はAの電子の詰まっていない準位に入ることができます。
そして、このフェルミ準位は物質によって異なるため、標準電極電位も物質によって異なります。
これは、 簡単には物理で習う仕事関数を負の値にしたようなイメージでとらえてよいでしょう。
仕事関数が大きいほど、フェルミ準位の絶対値も大きく、つまり電子を出しにくい、酸化されにくいと言えます。
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