分配平衡と分配係数・分配比 導出と計算方法【演習問題】

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分配平衡 導出と計算方法【演習問題】

 

分配平衡の計算問題を解いてみよう【演習問題】

 

というテーマで解説していきます。

 

分配平衡とは? 計算問題を解いてみよう【演習問題】

 

有機溶媒や水といった混ざらない二つの組み合わせの溶液があるとします。ここに両方に可溶な物質を、どちらかの層にとかしたとします。

 

そして、これらを振って混ぜたとすると、両方の相に一定量の物質がとけて、平衡状態に達します。

 

このような化学平衡のことを、特に分配平衡と呼びます。

 

分配平衡に達するときの 有機相における物質の濃度(溶けている全物質)/水相における物質の濃度(溶けている全物質) のことを、分配比と呼びます。

 

以下の定義式の通りです。

 

 

 

分配平衡では、分配比を求める問題であったり、逆に分配比が与えられており抽出後のどちらかの相の物質の濃度を求める問題が多いです。

 

以下で実際に計算してみましょう。

 

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分配平衡の計算問題を解いてみよう【演習問題】

 

例題

 

ある化学物質xがとけている水溶液500mlがあるとします。この溶液に対して、1回に200mlのクロロホルムを使用して抽出する操作を2回行ったとします。

 

このとき、物質xが80%水相から除くことができたとすると、このときの分配比はいくつになるでしょうか?

 

解答
 
まず、求めたい分配比をDとおきましょう。

 

水溶液中の物質濃度をCo mol/Lとすると、溶液500ml中には 0.5 × Co mol溶けていることになります。
以下のイメージです。

 

 

 

ここで、クロロホルムを混ぜることにより、水相における物質がクロロホルムへ移ります。物質が移動した後の水槽中の濃度をc1mol/Lになったとすると、移った分の物質量は (C1 - C0) × 0.5 molとなります。

 

つまり、(C1 - C0) × 0.5 mol が 200mlのクロロホルム(有機相)側に存在するため、濃度は (C1 - C0) × 0.5 / 0.2 mol/Lとなります。

 

よって、1回目抽出時の分配比は以下の定義に従って、D =( (C1 - C0) × 0.5 / 0.2 ) / C1 となります。

 

 

ここで、C1について式を変形しなおしておきましょう。

 

すると、 D = ( 2.5 C1 - 2.5 Co ) / C1 より、D C1 = 2.5 C1 -2.5 Coとなります。

 

よって、 2.5 Co = (2.5 - D) C1 より、C1 = 2.5 × C0 / (2.5 -D)  となります。

 


そして、もう一度抽出しなおした後の濃度をC2とすると、上の式のCoの係数をもう一度かけなおせばいいです。

 

結果として、C2 = (2.5/(2.5 -D))^2 C0となります。Coの係数をAとおいておきましょう。

 

このときクロロホルムには20%つまり、初期濃度の0.2の割合分の物質が残っているため、0.2 C0 = A C0 となるため、つまりA=0.2となります。

 

よって、 2.5 / (2.5 - D) = 0.447 をとくと、分配比 D = 2.32 という値が得られます。

 

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分配比と分配係数の違いは?

 

このように、分配比は分配平衡(抽出)において需要なパラメータです。

 

ただ、分配比と似た用語に、分配係数と呼ばれるものがあります。基本的に記号はKdで表すことが多いです。分配比と分配係数の違いは何でしょうか?

 

実は、分配比は有機相に溶けている「全ての化学物質」と水相に溶けている「全ての化学物質」の比です。

 

一方で、分配係数の定義は、有機相に溶けている「特定の化学物質」と水相に溶けている「特定の化学物質」の比を指します。

 

上の計算問題の例では溶けている物質が一つとして簡単に計算できるような例題であったため、実は分配比でも分配係数でも同じことになります。

 

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