定容熱容量(Cv)と定圧熱容量(CP)とは?違いは?

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定容熱容量(Cv)と定圧熱容量(CP)とは?違いは?

 

電気化学を理解する上で、「エネルギー変換の仕組み」や「エンタルピー・エントロピー・ギブズエネルギー」といったエネルギーの相互変換の基礎となる式について理解することは大事です。

 

各エネルギーの中でも、熱エネルギーに関する用語として、「定容熱容量(CV)」と「定圧熱容量(CP)」とよばれるものがあります。定容熱容量(CV)と定圧熱容量(CP)の定義やその違いについて知っていますか?

 

ここでは、定容熱容量(CV)と定圧熱容量(CP)の定義やその違いについて解説していきます。

 

 

・そもそも熱容量とは?

 

・定容熱容量(CV)の導出

 

・定圧熱容量(CP)の導出 CpとCVの違いは?

 

・定容熱容量(Cv)と定圧熱容量(Cp)の計算問題を解いてみよう【演習問題】

 

というテーマで解説していきます。

 

 

そもそも熱容量とは?

熱容量とは、ある物質のあたたまりにくさを表している指標です。熱容量の定義としては、ある物質を1℃(1K)あたためるために必要な熱量(エネルギー)といえます。

 

つまり、熱容量が大きいほどあたたまりにくい物体であるといえます。

 

熱容量には種類があり、定容熱容量と定圧熱容量があります。

 

 

 

言葉の通り、定容熱容量とは定容条件、つまり体積が一定の条件下での物体のあたたまりにくさ(熱容量)です。CVつまり、constant volumeの略です。

 

一方で、定圧熱容量とは、定圧条件下、つまり圧力が一定の条件下での熱容量のことを指します。CPつまり、constant pressureの略です。

 

(※ちなみに、熱容量と比熱には深い関係があり、こちらで詳しく解説しています。)

 

以下で一つずつ確認していきます。

 

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定容熱容量(CV)の導出

まずは、より簡単に導出できる定容熱容量の方の導出から行っていきましょう。

 

言葉の通り定容の熱容量を考えるときには、体積が一定の系を考えていきます。
以下のようなイメージです。

 

 

 

つまり、内部エネルギーの変化に着目しますと、外部への仕事Wは無し(=0)といえます。外部から形に与えた熱エネルギーqがそのまま、系の中の物質の温度変化の熱量に相当するといえます。

 

これを式にすると、Cv ⊿ T = Q という計算式が成り立ちます。このCvが定容熱容量を表しています。
もしくはq = ∫ Cv dT とも記載できます。

 

 

定容変化では、熱量の変化と内部エネルギーの変化が等しくなります。そのため、Cv = ⊿U(内部エネルギー) / ⊿T(温度変化)ともかけます。

 

1molあたりの定容熱容量のことを定容モル熱容量と呼びます。

 

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定圧熱容量(CP)の導出 CpとCVの違いは?

 

次に、定圧熱容量(Cp)の導出を行います。
言葉の通り定圧の熱容量を考えるときには、圧力Pが一定の系を考えていきます。そのため、系に熱量を与えると体積が変動し、外部に仕事をすることになります。

 

以下のようなイメージです。

 

 

ここで、定圧条件下では、仕事分があるため結局はエンタルピー変化を考えればいいです。
よって、Cp ⊿ T = ⊿H という計算式が成り立ちます。このCpが定容熱容量を表しています。

 

 

 

ここで、⊿H= ⊿U + p⊿Vで表すことができます。ここで、⊿U / ⊿T =Cvであることを使用しましょう。

 

すると、この両辺を⊿Tでわると、Cp = Cv + p⊿V/⊿T となります。

 

ここで最後の項は、1molであれば気体の状態方程式pv=RTより、Rとなります。
これがCpとCvの差の公式といえます。

 

つまり、Cpの方が仕事分が若干大きな値となります。

 

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定容熱容量(Cv)と定圧熱容量(Cp)の計算問題を解いてみよう【演習問題】

 

例題
 
定容下条件において、可変しない容器内に物質を2mol充填するとします。
このときに、外部から100Jの熱量を与えたときに、5K温度が変化したとします。

 

このときの、定容モル熱容量と定圧のモル熱容量の計算しましょう。

 

解答

 

以下のような求め方で計算できます。

 

定容モル熱容量は定義に従い、Cv = 100 / 2 / 5 =10[J/K/mol] となります。
一方定圧熱容量Cp = Cv + R = 10 + 8.31 =18.31[J/K/mol] となります。

 

どちらのモル熱容量の単位は[J/K/mol] となることに気を付けましょう。

 

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