反応ギブズエネルギーと標準生成ギブズエネルギー

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反応ギブズエネルギーと標準生成ギブズエネルギー

 

このページでは、反応ギブズエネルギーと標準生成エネルギーについて解説します。

 

一般的にギブズエネルギーと呼ぶ時は、反応ギブズエネルギーのことを指します(ギブズエネルギーとエンタルピー、エントロピーの概要はこちらで解説しています)。

 

 

反応ギブズエネルギーと標準生成ギブズエネルギー 記号の違い

 

化学反応において、反応ギブズエネルギーの符号が負であると自発的に反応が進みますが、反応ギブズエネルギーの値は通常標準生成ギブズエネルギーから算出します。

 

まず、反応ギブズエネルギーの値は通常標準生成ギブズエネルギーの記号の違いを下記に示します。

 

 

 

反応ギブズエネルギーの下付きのrはreactionの略です。このr自体も記載しないで略す場合もあります。

 

標準生成ギブズエネルギーの下付きのfはformationの略です。

 

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反応ギブズエネルギーと標準生成ギブズエネルギーの定義

 

反応ギブズエネルギーと標準生成ギブズエネルギー(化合物)と標準生成ギブズエネルギー(イオン)の定義を以下に示します。

 

 

上記のよう、反応ギブズエネルギーは右辺(生成系)の標準生成ギブズエネルギーに係数をかけ合わせたものの総和から、左辺(原系)の標準生成ギブズエネルギーに係数をかけ合わせたものの総和を差し引いたものです。

 

また、標準生成ギブズエネルギーは上記のよう化合物とイオンで若干定義が異なるため、区別して理解しましょう。

 

イオンの標準生成ギブズエネルギーでは、同符号のみのイオンの溶液は作れないため(クーロン(静電気力)反発により)、カチオンとアニオンの標準生成ギブズエネルギーの差しかわかりません。そのため、活量1つまり、1mol/L、PH(ペーハー)0の水素イオンのを基準としています(活量はこちらで説明しています)。

 

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ギブズエネルギーの反応例と計算方法【演習問題】

 

以下の例題を元に、ギブズエネルギーの反応を考えていきましょう。

 

例題

 

反応ギブズエネルギーと標準生成ギブズエネルギーを CO(g)+1/2O2(g)→CO2(g) の反応を例に
考えてみましょう。

 

解答

 

標準生成ギブズエネルギーの値はそれぞれ、

 

CO(g)=-137.2kJ/mol、O2(g)=0kJ/mol、CO2(g)=-394.4kJ/molです(このデータは各種教科書や便覧に記載されています。)

 

よって、⊿rG=(-394.3)-(-137.2+1/2*0)=-257.2kJ/molとなり、左→右の反応が自発的に進む方向です。

 

しかし、自発的に進む方向がわかったとしても、現実的に進まない場合があります。それは速度論にその自発的におこる反応が非常に遅い場合です。非常に長い目で見たら変化しているかもしれませんが、私たちが生きている間にでその反応がほとんども進まない反応もあります

 

(例えばCにおいてダイヤモンドからより安定なグラファイトへ変化する反応など。

 

このような状態のことを速度論的に安定と表現し、熱力学的な安定とは区別されます。)

 

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