【緩衝作用】酢酸の緩衝溶液のpHを計算してみよう【酢酸の解離平衡時の平衡定数】
電気化学的な技術を用いているめっきですが、めっき浴とよばれるめっきを行うために準備する液体があります。この液体にめっきさせたいものを入れ、被膜を形成することが基本です。
めっきではpHや温度条件などで、めっきの良し悪しが決まるためにその管理をきちんと行うことが大事です。
特にpHの変化を抑えるためには、めっき浴にはほう酸、りん酸などの有機酸が添加されています。
このように、pHの変化を抑制する作用のことを緩衝作用とよびます。
ここでは、緩衝作用や酢酸の電離平衡(解離平衡)時の平衡定数、pHの計算方法に関する以下の内容を解説していきます。
・緩衝作用とは?
・酢酸(CH3COOH)と酢酸ナトリウム(CH3COONa)の解離(電離)と緩衝作用
・酢酸の緩衝溶液のpHを計算してみよう【酢酸の解離平衡時の平衡定数】
というテーマで解説していきます。
緩衝作用とは?
緩衝作用とはpHとの関わりが強く、ある溶液に添加剤を加えることによってpHの変化を抑える作用のことを指します。pHの変化を抑制することは、酸塩基平衡を保つことともいえます。
また、このような緩衝作用をもつ溶液のことを緩衝溶液とよびます。緩衝溶液として、有名なものの例としては、酢酸と酢酸ナトリウムの組み合わせであったり、アンモニアと塩化アンモニウムの組み合わせがあります。
つまり、電離度が低い酸性の溶液(弱酸)とその塩の組み合わせであったり、同様に電離度が低いアルカリ性の溶液(弱塩基)とその塩の組み合わせがあると、この緩衝作用が表れます。
以下で緩衝作用について、具体例を交えて解説していきます。
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酢酸(CH3COOH)と酢酸ナトリウム(CH3COONa)の解離(電離)と緩衝作用
酢酸の場合は以下のような電離平衡を形成しています。
CH3COOH ⇄ CH3COO- + H+ が成立します。酢酸は弱酸であるために、位置が完全に電離しているわけではなく(電離度が1でない)、一部のみが電離しています。
一方で、酢酸ナトリウムは以下のような電離平衡となります。
CH3COONa ⇄ CH3COO- + Na+ となります。こちらは、塩であるため基本的にほぼ完全に電離しています。つまり、CH3COO-が大量にあるといえます。
よって、最初に挙げた酢酸の電離平衡において、CH3COO-が大量にあるために、ルシャトリエの法則により平衡が左のCH3COOHに偏っています。つまり、ただでさえ電離度が高くない、酢酸の電離度がさらに低下しているといえます。
そして、何らかの副反応がおこりプロトン濃度(H+)が高まったとします。つまり酸性度が強くなるとします。このときに、多量にあるCH3COO- + H+ → CH3COOHの反応が起こるため、酸性度が高くなりません。
逆に何かしらの望んでいない反応により、OH-の濃度が高まったとします。このときは、CH3COOH + OH- → CH3COOH + H2O という反応が起こるため、こちらもpHが変化しません。
このようなメカニズムから緩衝溶液では、緩衝作用がおこることによって、pHの変化が抑制されるという仕組みになっています。
また、先の例のように同じような物質やイオンで似たようなものから構成されるために、pH抑制することができました。似たような構成であるため、両式においてCH3COO-が関係することが要因です。このように、共通のイオンが反応に関わっており、共通のイオンの発生が抑えられていることを共通イオン効果ともよびます。
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例題
酢酸の電離定数をKa=10^-4.7mol/Lとして以下の例題をといてみましょう。
CH3COOHの濃度が0.15mol/Lであり、かつCH3COO-の濃度も0.15mol/Lである、200mlの溶液があるとします。
ここで、H2SO4を0.003mol/LとかしたときのpHの変化を考えていきましょう。
体積変化は無視できるとします。
解答
典型的な緩衝溶液におけるpH計算の問題です。
反応前、反応量、反応後の各々濃度を表にまとめるとわかりやすいです。以下の通りです。
これを緩衝溶液における平衡定数の式に当てはめ、その値を比較することで、水素イオン濃度を算出します。
この式に代入して、10^-4.7mol = 0.0024 × [H+] / 0.036 をときます。
すると [H+]=約3 ×10^-4 mol/Lとなります。pHの定義より、-log10 (3×10-4)より、4-0.477=3.523となります。
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