【水分厳禁!?】リチウムイオン電池の製造時水分の混入がNGな理由
スマホ向けのバッテリーや電気自動車向けバッテリーを始めとしたリチウムイオン電池において、更なる高容量化、高電圧化、高エネルギー密度化に向けて、各企業で様々な研究開発が進められています。
ただし、リチウムイオン電池製造時は水分の混入が厳禁であり、ドライルームやグローブボックスと呼ばれる湿度がほぼ0%である環境下で製造します。
こちらのページでは、
・リチウムイオン電池の製造時水分の混入がNGな理由
というテーマで解説しています。
リチウムイオン電池の製造時水分の混入がNGな理由 -合剤の混練・塗工工程-
リチウムイオン電池製造時に水分の混入がNGな理由はいくつかあります。
まず、電極作製工程、特に正極や負極の合剤の混練・塗工工程において、水分が混入するとNGな理由について解説します。
溶剤系により正極を作製しようとした場合、バインダーにPVDFを使用することが一般的です。
混練時に水分が混ざるとPVDFと水分(H2O)が反応し、アルカリ性になり、電解液がゲル化し使い物にならなくなってしまうために水分厳禁となっています。
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リチウムイオン電池の製造時水分の混入がNGな理由-電解液塩LiPF6との反応-
リチウムイオン電池の電解液には一般的に溶媒に有機溶剤系のエチレンカーボネートなどを混ぜたものに、LiPF6の塩を溶かし、さらにサイクル特性などを良くする電解液の添加剤(ビニレンンカーボネート(VC)など)を入れることが一般的です。
ここで、LiPF6は水分と反応しフッ酸を生じます。
フッ酸は酸化性が非常に高い酸であり、電池として機能しなくなるだけでなく、触れると非常に危険なものです。
そのため、リチウムイオン電池は製造時に水分が混入することを非常に嫌うのです。
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