二次電池の性能比較 作動電圧、エネルギー密度、寿命、作動温度範囲、安全性の比較
二次電池、つまり充電可能な電池にはいくつか種類があり、ニッケル・カドミウム電池(ニッカド電池)、ニッケル・水素電池、鉛蓄電池、リチウムイオン電池、ナトリウム硫黄電池、レドックスフロー電池などが挙げられます。
各々の電池は実用化されており、それぞれ長所、短所があり、用途により使い分けられます。
こちらのページでは、
・二次電池の性能の項目と比較(作動電圧とエネルギー密度)
・二次電池の性能比較(寿命、作動温度、安全性)
二次電池の性能の項目と比較(作動電圧とエネルギー密度)
二次電池の性能としては、作動電圧やエネルギー密度、出力特性、寿命、コストなどが挙げられます。
以下にこれらをまとめた表を示します。
作動電圧の比較
まず、作動電圧の比較をしてみましょう。
作動電圧は正極の作動電位と負極の作動電位の差であり、使用する活物質の種類や内部抵抗の大きさにより変化します。
一般的な、ニッケル水素電池では平均作動電圧が1.2V、鉛蓄電池2.0V、リチウムイオン電池2.4〜3.8V程度、ナトリウム硫黄電池(NAS電池)2.1V、レドックス1.4Vとなり、リチウムイオン電池の作動電圧が非常に大きい値を示します。
ちなみに一次電池であるマンガン乾電池やアルカリマンガン乾電池では、1.5V程度となります。
エネルギー密度(質量エネルギー密度、質量エネルギー密度)
次にエネルギー密度について比較してみましょう。
エネルギー密度とは、作動電圧×電池の容量÷電池の質量もしくは体積で表される量であるため、上述の作動電圧が高いほどエネルギー密度も高い傾向にあります。
質量エネルギー密度は、ニッケル水素電池60〜120Wh/kg、鉛蓄電池20〜35Wh/kg、リチウムイオン電池150〜200Wh/kg、ナトリウム硫黄電池100〜200Wh/kg、レドックスフロー電池10〜30Wh/kg程度となります(同じ種類の電池でも大きく値は異なります。)
体積エネルギー密度は、ニッケル水素電池140〜300Wh/kg、鉛蓄電池50〜90Wh/kg、リチウムイオン電池200〜400Wh/kg、ナトリウム硫黄電池150〜250Wh/kg、レドックスフロー電池15〜40Wh/kg程度となります(同じ種類の電池でも大きく値は異なります。)
一般的に体積エネルギー密度の方が質量エネルギー密度の方が値が大きくなります。
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二次電池の性能の項目と比較(寿命と作動温度範囲、安全性)
寿命の比較
寿命は使用条件により同じ電池でも大きく変化します。例えばリチウムイオン電池では常温より高温になるほど劣化が大きくなることが知られています。
他にも同じ種類の電池でも構成材料や組成など電池の設計により変化しますが、一般的に期待される各電池の寿命の比較をしてみましょう。
寿命は、ニッケル水素電池500〜1500サイクル、鉛蓄電池5〜10年、リチウムイオン電池10年、ナトリウム硫黄電池15年、レドックスフロー電池10年程度となります(上述のよう同じ種類の電池でも大きく値は異なります。)
そのため、最終製品に電池を使用する際に最終製品における使用条件を想定した寿命評価試験を行う必要があります。
作動温度範囲の比較
作動温度範囲は、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、リチウムイオン電池は気温と同等程度サイクル、ナトリウム硫黄電池では300℃程度、レドックスフロー電池では10〜40℃程度です(上述のよう同じ種類の電池でも大きく値は異なります。)
ニッケル水素電池や鉛蓄電池と比べますと、リチウムイオン電池の方が作動温度範囲は大きい傾向にあります。
-10℃〜60℃程度まで作動温度範囲を保証しているものもあります。
ただし、充電時と放電時の作動温度範囲や通電条件が制限されている場合もあり、例えばリチウムイオン電池では低温下で急速充電を行うと電析と呼ばれる現象が起き、電池として機能しなくなる場合がありますので、きちんと電池の取り扱い説明書を見て作動温度範囲の確認を行うことが重要です。
安全性の比較
最近では、リチウムイオン電池の発火事故なども多く発生し、電池の安全性への関心がみなさん高まっているかと思います。
安全性は、ニッケル水素電池、鉛蓄電池、レドックスフロー電池は非常に高く熱暴走に至るおそれが低いです。
リチウムイオン電池やナトリウム硫黄電池では使用する構成材料の関係から、熱暴走に至る危険性があります(各々の詳細ページのご参照お願いします)。
そのため、熱暴走に至らないようにシステムでの保護や電池自体の安全性を高める動きが進んでいます。(正極活物質にリン酸鉄リチウムを使用したり、負極活物質にチタン酸リチウムを使用したり、電解質に全固体を使用しようと試みたりが行われています)。
リチウムイオン電池やナトリウムイオン電池を導入する際は、各種安全性試験をきちんと行った上で導入するようにしましょう。
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