外部温度と電池の容量の関係(寒い方が容量小さい?)

外部温度と電池の容量の関係(寒い方が容量小さい?)

 

近年、Galaxy note7やボーイング787などのリチウムイオン電池の発火事故が急増しており、リチウムイオン電池の危険性が認識されるようになってきました。

 

一方、リチウムイオン電池は高電圧、高容量、高エネルギー密度、長寿命などのメリットがあるためスマホバッテリーや電気自動車搭載電池、家庭用蓄電池などさまざまな製品に採用されています。

 

今後のIOT化が進む中で、このような特長を持つリチウムイオン電池の重要性はさらに増していきます。

 

ここでは、リチウムイオン電池の重要なパラメータである容量と外部温度の関係(暑さや寒さ)について解説していきます。

 

 

・外部温度と電池の容量の関係

 

・外部温度と内部抵抗の関係

 

というテーマで解説していきます。

 

(※リチウムイオン電池に求められる特性のまとめはこちらに記載しています。)

 

 

外部温度と電池の容量の関係

突然ですが、みなさんはスマホを使っていて冬場の方が電池が早く切れると感じたことはないでしょうか?

 

実は外部温度と容量(Ah,mAhで表される容量)は密接な関係があります。

 

結論から言いますと、

 

 外部温度が低い方が電池の容量が小さくなる傾向にあります。

 

 

この理由を下記充放電曲線を元を解説します。

 

一般的なリチウムイオン電池(正極活物質:コバルト酸リチウム、負極活物質:黒鉛使用)で、
定格容量は1000mAh(1Ah)1Cでの放電(ここでは1000mA定電流放電とします)を行った場合の
各温度での放電曲線イメージを元に解説していきます。

 

 

 

充電電圧、放電終止電圧は正極、負極活物質の組み合わせにより変化し、
一般的なリチウムイオン電池では充電電圧4.2V付近、放電終止電圧2.5V付近に設定することが多いです。

 

上図にて、

 

・黒色曲線:SOC-OCV曲線
(電流を流していない時の電圧のこと、放電容量1000mAhに対応するところを
 SOC100%として記載しています。)
・赤色曲線:45℃における放電曲線
・緑色曲線:25℃における放電曲線
・青色曲線:-10℃における放電曲線

 

を表しており、温度が低くなるほど放電曲線が下にシフトしていきます。

 

これは、放電時オームの法則により電流I×電池の内部抵抗R分だけ、OCV(開放電圧)より
端子電圧が低下することが要因です。

 

式に表すと 端子電圧E=理論起電圧 E0 - IRとなります。

 

ここで、同じ電池であるため理論起電圧E0は同じで、同じ通電電流であるため I も同じです。

 

つまり、端子電圧が下にシフトしているということは、内部抵抗Rが外部温度が下がると上昇する
ということを表しているのです。

 

端子電圧が下にシフトすると放電終止電圧に先に到達することになるために、容量が低下します。つまり、寒いほど基本的に容量は低下するのです

 

そして低温でも常温と同等の容量や出力などを出せる性能を持った電池のことを低温特性が高い電池と表現することがあります。

 

それでは、なぜ温度が下がると内部抵抗が上昇するのか?下記に解説します。

 

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電池の内部抵抗と外部温度の関係

まず、電池の内部抵抗とは簡単に説明しますと、電池の充電や放電に伴い、内部で化学反応が起こる際、その反応が遅いことを意味します。

 

つまり反応が遅いこと自体が抵抗となるのです。

 

そして、内部抵抗はいくつかの種類に分類されます。

 

結論から言いますと、

 

このいくつかの種類の内、ほとんどの内部抵抗は温度が下がると上昇し、温度が上がると低減します。

 

これにより、温度が下がると放電電圧も全体的に下がり、結果として放電終止電圧にあたり、容量が小さくなります。

 

低温では性能が劣化する(容量が低下したり、内部抵抗が上昇し出力が出にくくなる)のは、このような理屈によります。

 

 

次に、電池の内部抵抗の種類を解説します。

 

電池の抵抗の種類のイメージを下記に示しました。

 

 

 

細かく分けると、上記のよう各種反応が挙げられるのですが、
この中でも代表的な内部抵抗と外部温度の関係について説明していきます。

 

(詳細の内部抵抗の説明は正極の電極構造、負極の電極構造のページで解説しています。)

 

①正極、負極の電荷移動抵抗(活性化過電圧とも呼びます)

 

正極や負極へLiイオンが挿入されたり、逆に正極や負極からLiイオンが脱離する際に
電荷の移動を伴い反応(電子授受反応とも呼びます)が起こります。

 

この反応速度は活性化エネルギーに起因している反応であるため、
下のアレニウスの式に従います。

 

ここで、T(温度)に着目すると、この値が小さくなるとexp内の負の絶対値が大きくなるため、
反応速度定数kも小さくなります。

 

よって、反応が遅くなる、つまり抵抗が上昇します。

 

 

 

②固体内拡散抵抗(濃度過電圧とも呼びます)

 

Liイオンが正極活物質や負極活物質に挿入された後、各活物質内をLiイオンが固体内拡散します。

 

この際に、拡散係数のアレニウスの式に従いその速度は決まります。

 

そして、拡散係数のアレニウスの式は、通常のアレニウスの式と同様でT(温度)に着目すると、この値が小さくなるとexp内の負の絶対値が大きくなるため、反応速度定数kも小さくなります。

 

よって、反応が遅くなる、つまり抵抗が上昇します。

 

 

③Liイオンの電解液中の移動抵抗

 

電解液中のLiイオンの移動のしやすさも抵抗の一つであり、
この移動のしやすさ(移動度)は粘度に反比例します。
移動度の関係式はこちらで解説しています)。

 

またイメージしやすいと思いますが液体は一般的に、
温度が高いと粘度が低く、温度が低いと粘度が高い性質があります。

 

よって、温度が低いほど粘度が上がる、つまり移動度が下がり、抵抗上昇につながります。

 

その他

 

上記①~③の抵抗が電池中の抵抗の大きな割合を占めるのですが、
リード抵抗も若干存在します。

 

リード部分としては、ラミネート型電池ではタブリードの部分がこれに対応し、角型電池では端子板や集電体、組電池ではバスバーなどに対応します。

 

リードは一般的に金属でできているのですが、この金属抵抗は上述①~③と逆で、
温度が高いほど抵抗も上昇します。

 

これは自由電子により熱が伝わっているのですが、温度が上がると格子振動自体が大きくなり、
自由電子の伝わりが阻害されて、抵抗が上昇するのです。
ただし、①~③の影響の方が大きいため、こちらは無視して問題なしでしょう。

 

まとめ

 

よって、温度が下がると電池の内部抵抗のほとんどが上昇することで、作動電圧の低下、さらに容量低下につながるのです。

 

低温での出力の方が小さいため、バイクの始動用バッテリーなどの規格には低温時の出力を評価する項目としてCCA(コールドクランキング電流)というものを使用し、バッテリーの始動性能の大きな目安値になるものもあります。

 

CCAなども含め、低温での劣化が少なく出力や容量が出せる特性のことを低温特性ともよびます。

 

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