ニュートン粘性の法則の導出と計算方法 ニュートン流体と非ニュートン流体とは?【粘性係数(粘性率)と速度勾配】

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ニュートン粘性の法則の導出と計算方法 ニュートン流体と非ニュートン流体とは?【粘性係数(粘性率)と速度勾配】

 

物質の移動現象を表す公式にはさまざまな種類があり、その中の代表例の一つとしてニュートン粘性の法則があります。

 

このニュートンの粘性法則とはどのような意味をもち、どういった場面で使用するのか理解していますか。

 

ここでは、「流体の基礎である粘性・非粘性」「ニュートン流体・非ニュートン流体(ビンガム流体やダイラタント流体など)」「ニュートン粘性の法則の導出や計算方法」について解説していきます。から

 

・ニュートン流体と非ニュートン流体、粘性と非粘性とは?

 

・ダイラタント流体(ダイラタンシー)・チキソトロピー・ビンガム流体(塑性流体)・擬塑性流体とは?

 

・ニュートン粘性の法則と粘性係数・速度勾配(せん断速度依存性) 【二つの平板とクエット流れ】

 

・ニュートンの粘性法則を使用して、粘性係数(粘性率)や速度勾配を求めてみよう

 

というテーマで解説していきます。

 

 

ニュートン流体と非ニュートン流体、粘性と非粘性とは?

 

ニュートン粘性の法則について解説していく前に、流体の基礎的な性質である粘性・非粘性について確認していきます。

 

粘度という言葉からも想像がつくように、粘性とは流体における粘り気のことを指します。私たしの身近にある流体には、この粘性が多かれ少なかれ必ず存在します。

 

例えば、カレーは粘性が高い流体であり、水は粘性が低い流体といえます。このように、粘性がある流体のことを粘性流体と呼び、一方で身近にはないですが粘性がない(非粘性)流体のことを非粘性流体と呼ぶのです。

 

 

そして、粘性がある流体には、後に詳しく解説しますが、ニュートン粘性の法則に従う流体とニュートンの粘性法則が適用できない流体に分類できます。

 

具体的には、ニュートン粘性の法則に従う流体をニュートン流体、そうでないもの非ニュートン流体と呼びます。

 

そして、非ニュートン流体にはいくつかの種類が存在し、以下でその特徴について解説していきます。

 

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ダイラタント流体(ダイラタンシー)・チキソトロピー・ビンガム流体(塑性流体)・擬塑性流体とは?

 

代表的な非ニュートン流体には、ダイラタント流体・チキソトロピー・ビンガム流体(塑性流体)・擬塑性流体というものが存在します。

 

後に詳しく解説しますが、ニュートン流体は速度勾配(ずり速度)と流体に加える力(せん断応力:ずり応力)が比例関係にあります。一方で、非ニュートン流体では、この速度勾配とせん断応力が比例関係になく、以下のような関係性を持ちます。

 


これら非ニュートン流体の種類と各々の特徴を以下で確認していきます。

 

 

ダイラタント流体(ダイラタンシー)

 

ダイラタント流体(ダイラタンシー)とは、上図からも読み取れるようにせん断速度(ずり速度)が上がるほどに応力が高くなる、つまり粘性が上がる非ニュートン流体といえます。

 

つまり、ダイラタント流体の上で速く足踏みをすると、粘度が非常に高くなるために、歩けるようになることもあります。身近には、水に片栗粉をとかしたもの、チョコレートを溶かしたものなどがこのダイラタンシーに相当します。

 

なお、当サイトではリチウムイオン電池に関する内容をメインに記載していますが、電極材料のスラリーを作成するときに材料組成や混練条件が適切でないとこのダイラタンシーとなり、電池を作れなくなるため最適化が必要です。

 

 

ビンガム流体(塑性流体)

 

なお、ビンガム流体とはある一定以上の力をかけることで初めて動く流体といえます。

 

水などの液体では、基本的に高い方から低い方へ自発的に流れますよね。一方で、歯磨き粉のようなペースト(スラリー)では、ある程度の力を外部から加えないと流動しません。

 

このような流体をビンガム流体とよび、別名塑性流体と呼ぶのです。

 

上のグラフを見ればわかるように、速度勾配(せん断速度)が0の状態であっても、応力が必要なことがわかります。なお、この切片に相当する応力のことを、降伏値とよびます。

 

 

擬塑性流体

 

なお、速度勾配が大きくなる(ずり速度が大きくなる)と、せん断応力が下がり、粘性係数が小さくなる流体に擬塑性流体というものが存在します。

 

上のSDカーブでみると、せん断速度(グラフ右にいく)ほど応力の上昇が抑えられ、グラフが寝てくることがわかります。

 

ダイラタント流体とは逆の性質を持った流体ともいえます。

 

ただ、擬塑性流体では、時間が経ったとしても、一度下がったり、上がったりする粘度が元に戻りにくいといえます。つまり、一度早くかき混ぜて、流体に負荷を加えた場合は、さらさらに流体となったままとなりやすいです。

 

 

チキソトロピー

 

なお、擬塑性流体と似たように速度勾配が大きくなると、せん断応力が小さくなる性質をもつが、擬塑性流体とは分類が異なるものがあります。このような流体をチキソトロピーと呼びます。

 

このチキソトロピーと擬塑性流体の違いとしては、時間経過後に粘度が元に戻りやすいということです。

 

チキソトロピーの例としては、ケチャップや塗料が挙げられます。

 

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ニュートン粘性の法則と粘性係数・速度勾配(せん断速度依存性) 【二つの平板とクエット流れ】

 

それでは、本題のニュートン流体とニュートン粘性の法則について確認していきます。

 

まず、ニュートン粘性の法則とは以下のような式で計算されるものです。

 

 

このニュートン粘性の法則を導出していきましょう。

 

ニュートン粘性の法則を導くために、最も簡単な二つの平板における流体のモデルを考えていきます。片方の平板は固定し、もう一方を一定の速度で移動させたとします。すると、以下のような平行板と流体の関係が導出されるのです。このような流れをクエット流れとよびます。

 

流体には先にも述べたように粘度があるために、平板を移動さえた方向にせん断応力τ[Pa]が発生します。このτという記号の読み方はタウです。

 

 

なお、せん断応力は先にものべたように、ずり応力と呼ぶケースもあります。ここで、ニュートン流体では、速度勾配とせん断応力τと比例関係となることが知られているために、せん断応力∝速度勾配(せん断速度)となるのです。

 

これに、比例定数である粘性率(粘性係数)を式に組み込むとニュートン粘性の法則が導出されるのです。なお、粘性率が多い程粘度が高く、粘り気がある流体であることを意味しています。

 

このようなニュートンの粘性法則によって、上のSDカーブにおいては、ニュートン流体は直線上となるのです。

 

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ニュートンの粘性法則を使用して、粘性係数(粘性率)や速度勾配を求めてみよう

 

それでは、ニュートン粘性の法則を理解するためにも、計算問題を解いてみましょう。

 

例題

 

ある粘性係数が1000Pa・sであるニュートン流体に対して、平行板の速度を0.01m/sで移動させたとします。このとき、平板間の距離を0.1mとしたときの、流体にかかるせん断応力(ずり応力)を計算してみましょう。

 

解答

 

上のニュートン粘性の法則の定義式に従います。

 

τ = 1000 × (0.01 / 0.1) = 100Paとせん断力が求められました。

 

きちんとニュートン流体に性質について理解しておきましょう。

 

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