マンガン酸リチウムの反応と特徴

マンガン酸リチウム(LiMn2O4)の反応と特徴

 

スマホ向けのバッテリーや電気自動車向けバッテリーを始めとしたリチウムイオン電池において、更なる高容量化、高電圧化、高エネルギー密度化に向けて、各企業で様々な研究開発が進められています。

 

このリチウムイオン電池の容量やエネルギー密度の設計を行う際、電池設計シートと呼ばれるフォーマットを用いて、容量やエネルギー密度の計算を行います。(※電池の容量の計算方法の概要はこちらで解説しています)

 

そして、容量や電圧、エネルギー密度に大きく関わる電池の構成として、活物質の種類が挙げられます。

 

 

このページでは、

 

・代表的な正極活物質であるリン酸鉄リチウム(LiMn2O4)の反応と特徴

 

について解説しています。

 

 

マンガン酸リチウム(LiMn2O4)の反応と特徴

マンガン酸リチウムの反応

 

マンガン酸リチウムは、充放電に伴いLiイオンがマンガン酸リチウムの結晶構造内に脱挿入されること(インターカレーション反応)で反応が進み、可逆的に使用することができます。

 

マンガン酸リチウムは、コバルト酸リチウムが持つ層状の結晶構造とは異なり、スピネル型構造と呼ばれる3次元的に空孔を含む構造を持っています。

 

放電曲線は以下のような形をしており、電位の高いところではリン酸鉄リチウムと同様に二相共存反応により反応が進むため平坦になって、そして電位の低いところではコバルト酸リチウムと同様になだらかな曲線になっています。

 

間の段の詳細は割愛させていただきますが、ヤーン・テラー効果と呼ばれる現象により変化が起きていることを表しています。

 

 

 

熱安定性はコバルト酸リチウムよりも高く、350℃付近で熱分解が起こります。

 

そのため釘刺し試験などの安全性試験への耐性は高いですが、過充電に対してはコバルト酸リチウム同様に結晶構造の崩壊により、酸素を放出し熱暴走に至る可能性があります。

 

また、マンガンはコバルトやニッケルよりも安価であることも、注目されている理由の一つです。

 

 

作動電位と充放電曲線、容量

 

作動電位はコバルト酸リチウムより高く、放電時の平均値(平均作動電位)は約4.0V vs Li+/Li という値を示します。

 

ただし、理論容量は約148mAh/gですが、実際の容量としては約120mAh/g程度です。

 

作動電圧がより高い方が望ましいが、容量が小さくても問題ない製品に使用する場合はマンガン酸リチウムが好まれます。

 

放電時にリン酸鉄リチウムの結晶構造内にLiイオンが挿入されると、マンガンの酸化数が4+→3+へ還元されます。

 

このMn3+/Mn4+の酸化還元電位が高いことが、高い作動電位と大きく関わっています。
(詳しい説明は物質の軌道の影響など複雑な反応によるため割愛させて頂きます。)

 

放電曲線は上述のように、電位の高いところで二相共存反応、低いところでなだらかな曲線になります。

 

再度放電曲線を記載させて頂きますね。

 

 

 

また、実際に使用できる容量と理論容量のは百分率は約80%程度と、リン酸鉄リチウムのほぼ100%よりは小さいですが、コバルト酸リチウムの約50%程度より大きいです。

 

これは、スピネル型構造の結晶構造がコバルト酸リチウムよりは安定であり、リン酸鉄リチウムよりは
安定でないためです。

 

また、放電曲線の中央あたりにヤーンテラー効果と呼ばれる現象により段がつくと解説しました。

 

このヤーンテラー効果は、相転移の一種であり、充放電に伴い相転移を繰り返すことで結晶に負担がかかるため、サイクル特性は一般的にあまり良くないと考えられています。

 

 

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マンガン酸酸リチウムの課題

 

過充電による結晶構造の崩壊

 

上述させて頂きましたように、充電時にマンガン酸リチウムからLiイオンが引き抜かれる時、引き抜かれ過ぎると(過充電してしまった場合)コバルト酸リチウム同様に、結晶構造が壊れてしまうことです。

 

結晶構造が壊れると可逆的に充放電ができない、つまり電池として機能しなくなってしまいます。

 

さらに、結晶構造が壊れると酸素を放出します。

 

過充電時は、正極の電位が急激に上がるため電解液が酸化分解され熱が発生します。

 

そして、電池温度が上昇することで負極と電解液の反応が発生しさらに電池温度上昇に繋がります。

 

さらに結晶構造が壊れることで発生した酸素との反応が起き、、、様々な反応が絡み合い熱暴走につながる可能性があるのです。

 

通常はセパレータが熱に反応することでシャットダウン機能が働いたり、システムにより熱暴走を止める設計となっているのですが、発熱速度が大きかったり、システム自体がうまく働かない場合もあり、事故につながるケースがあります。

 

使用時には、対応していない充電器を使用しないなど、過充電にならないように取扱いに注意しましょう。

 

 

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