リチウムイオン電池の電解液(塩)の材料化学 なぜ市販品ではLiPF6が採用されているか?

電解液(塩)の材料と特徴 なぜ市販品ではLiPF6が採用されているか?

 

いまでは、スマホ向けバッテリーや家庭用蓄電池電気自動車用搭載電池としてリチウムイオン電池が主に採用されています。

 

リチウムイオン電池は他の二次電池と比較しても、高電圧、高エネルギー密度、高出力、長寿命などのメリットがあります。

 

これらのメリットは主にリチウムイオン電池の内部抵抗が低いことが挙げられます。

 

内部抵抗の低さを実現するための要因の一つとして、電解液の設計(電解液に求められる特性を満たすこと)が挙げられます。

 

リチウムイオン電池の電解液は通電時、正極、負極間のリチウムイオンの移動、受け渡しをする役割を持っています。

 

リチウムイオン電池における電解液は、溶媒と溶質から構成され、溶媒にはエチレンカーボネート(EC)を始めとした有機系材料、溶質にはLi含有塩を使用しています。

 

ちなみに最も一般的なLi含有塩としてLiPF6が挙げられ、市販のリチウムイオン電池のほとんどはLiPF6が電解液の塩として採用されています。

 

ここでは、「リチウムイオン電池の電解液の溶質にLiPF6が採用されている理由」と「LiPF6に求められる特性」について解説していきます。

 

 

・電解液の溶質(LiPF6)に求められる特性 電位窓が広いこと

 

・電気伝導率が高いこと

 

・良質なSEIを作ること

 

・正極基材を腐食しないこと

 

といyテーマで解説しています。

 

 

電解液の溶質(LiPF6)に求められる特性 電位窓が広いこと

 

以下に電解液の塩に求められる特性について解説していきます。

 

電位窓とは、ある材料が電気的に分解せず安定していられる電位の幅のことを指しています。

 

リチウムイオン電池では、単電池の作動電圧の最大値が3~4V程度と高電圧であるため、電解液もこの高電圧に耐えられる材料であることが求められます。

 

電位窓が狭く、電池を作動させた時に、材料が分解してしまっては電池として機能しません。

 

上記の理由から、溶媒は水系ではなく有機系材料(エチレンカーボネートを始めとしたブレンド品)が使用されており、溶媒同様に塩も電位窓が広い必要があります。
 
最もよく使用されている塩はLiPF6であり、これを1M程度、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステル溶媒に溶かしたものが一般的に使用されている電解液です。

 

LiPF6塩の酸化電位は6.3V Li/Li+程度と耐酸化性に優れています溶媒の電位窓はこちらで解説しています)。

 

耐酸化性に優れているということは、もし電池が過充電になり正極の電位が上昇した場合でも分解が起こりにくくなり、安全性の向上にも繋がっています。

 

ただし、電解液は塩だけでなく溶媒の電位窓も関わってくるため、塩だけでなく、溶媒の設計とのバランスも重要となってきます。

 

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電気伝導率が高いこと

 

一般的に電池には低抵抗であることが求められ、電解液の移動抵抗を低減するには
電気伝導率を高くすることが求められます。

 

電気伝導率は下記のよう、反応に関わるイオンすべての電荷z、濃度c、移動度u、ファラデー定数を
かけたものの和で表されます(κ=Σ zcuF)。
 
イオンのモル伝導率に濃度の影響をかけ、それを足した和であるともいえます。

 

 
よって、電気伝導度を高める要素として、

 

①イオンの解離能を上げること
移動度を上げること

 

があります。

 

溶媒からのアプロ―チとしては、イオン解離能を上げるための比誘電率が大きい材料と移動度を上げるための粘度が低い材料を混ぜることで最適化されます。

 

塩からのアプローチとしては、イオン解離能を上げるためにリチウム塩の陰イオンの共役酸の酸性度、
つまりpKaが高くすることができます。

 

これは、酸性が強いほどイオン解離能が高くなるという性質を利用しているためです。

 

LiPF6塩は陰イオン(PF6-)の酸性度が強いためイオン解離能が高く、電気伝導率が高くなることが
LiPF6塩が採用されていることの一つの理由です。

 

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良質なSEIを作ること

 

一般的なリチウムイオン電池として負極活物質に黒鉛を使用している場合、電池の初回充電時、黒鉛表面にSEI(固体電解質相)と呼ばれる被膜が生成します。

 

SEI生成の反応は主に溶媒のECとのLiの反応ですが、他の反応として
LiPF6の分解反応も一部では起こっています。

 

LiPF6が分解され、生成されたLiF等が良質なSEIの一部として機能しています。

 

溶媒とのバランスにもよりますが、塩としてLiPF6を使用することで、良質なSEI生成し、
電池の内部抵抗の低減、サイクル特性や安全性の向上に寄与していることが、
LiPF6が採用されている理由の一つです。

 

例えばホウ素系Li含有塩等を使用した場合は、良質なSEIが生成されず、
内部抵抗の大きな上昇や安全性が低下することが報告されています。

 

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正極基材を腐食しないこと

 

リチウムイオン電池の正極の基材には、アルミ箔を使用することが一般的です。

 

塩の種類例えば、Li(CF3SO2)2Nという塩では、基材のアルミ箔を腐食することが報告されており、アルミ箔が腐食されると電気が取りだせなくなり、電池として機能しなくなります。

 

LiPF6を使用した場合では、F-がうまく作用しアルミと反応することで、AlF3やAlFxOyといった不動態膜を形成し、アルミ箔の腐食を保護してくれます。

 

上記のよう、正極基材のアルミ箔を腐食しないことがLiPF6が採用されている理由の一つです。

 

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