電解液(溶媒)の材料化学

電解液(溶媒)の材料化学

 

リチウムイオン電池の電解液は通電時、正極、負極間のリチウムイオンの移動、受け渡しをする
役割を持っています。

 

リチウムイオン電池における 電解液は溶媒に、Li含有塩を溶かしたものであるため、
溶媒と塩両方を考慮して設計する必要があります(塩に求められる特性はこちらで解説しています)。

 

このページでは、電解液の溶媒に求められる特性について解説しています。

 

 

電解液の溶媒に求められる特性

 

溶媒の電位窓が広いこと

 
実用化されている電池では、溶媒は水系ではなく有機溶媒が使用されています

 

 

(一部工事中:その中でも特にプロトン性溶媒と非プロトン性溶媒の説明追記予定〜〜〜〜)

 

 

 

これは下図のよう、有機溶媒は水系溶媒と比べて、電位窓(分解されずに安定して使用できる電位の範囲)が広いからです。

 

リチウムイオン電池では使用している3V〜4V付近と他の電池と比べて高い電圧で動作するため、それに耐えられる電解液でないと分解されて、電池として機能しなくなります。

 

ただし、負極に黒鉛等の炭素系材料を使用した場合は、電位窓を超えていることがわかります。

 

これは炭素系材料を使用した場合は、初回充電時に電解液が還元的に分解されSEI(固体電解質相)と呼ばれる被膜ができ、Liイオン伝導は保ちつつ、電解液の分解が大きく抑制されるという便利な機能を持っているため、問題ないのです。

 

 

電気伝導率が高いこと

 

電解液の塩に求められることに解説しましたが、低抵抗な電池を設計するには、
電解液の電気伝導率が高いことが求められます。

 

電気伝導率は下記の式であらわされます。

 

 
よって、電気伝導度を高める要素として、

 

@イオンの解離能を上げること(式中の濃度cが上がる)
A移動度を上げること(式中の移動度uが上がる)

 

があります。

 

溶媒からのアプロ―チとしては、

 

@イオン解離能(濃度)を上げるための比誘電率が大きい材料
A移動度を上げるための粘度が低い材料

 

を混ぜることで最適化されます。

 

 

@比誘電率の高い材料を使用する理由

 

比誘電率を上げるとなぜイオンが解離しやすいのか?ボルンの式を用いて解説します。

 

ボルンの式とは、溶媒の比誘電率とあるイオンの溶媒和のギブズエネルギーの関係を表したものです。

 

 

 

上式から、電荷zが大きく、イオン半径rが小さく、比誘電率εrが大きいほど僭(溶媒和のギブズエネルギー)
が絶対値が大きい負の値を取ることになります。

 

ギブズエネルギーは負であると反応が自発的に起こります。
(速度論的に反応が非常に遅い場合を除きます。)

 

また、負でその絶対値が大きいということは自発的に反応が進むための推進力が大きいということであり、
比誘電率が大きいほど溶媒和が進む、つまりイオンが解離しやすくなります。
 
比誘電率が高く、電位窓が広い材料にエチレンカーボネート(EC)やプロピレンカーボネート(PC)等の
環状のカーボネート系材料が挙げられます。
 
これらを使用することで比誘電率を高く出来るのですが、比誘電率が高い溶媒は分子間の相互作用を
起こしやすく、粘度が高いという特徴があります。
 
粘度が高いと電気伝導率が下がってしまうため、下記に記載する粘度が低い鎖状のカーボネート系材料
と混合したものが、現在のリチウムイオン電池用電解液として採用されてることがほとんどです。
 
また、プロピレンカーボネート(PC)は黒鉛負極を使用している場合、うまくSEI(固定電解質相)を形成できないことが報告されており、現在環状のカーボネート系材料のメインはエチレンカーボネート(EC)です。

溶媒中のECの成分比率はおおよそ30wt%程度でしょう。

 

ECやPCの物性はこちらで紹介しています。

 

 

A移動度を上げるための粘度が低い材料を使用する理由

 

移動度を上げるために粘度ηが低い材料を使用することはイメージしやすいでしょう。

 

私たちが泳ごうとする際も、ドロドロの液体中を泳ぐより、サラサラの液体中を泳ぐ方が
容易に移動できそうですよね。

 

つまり、移動度を上げる、つまり電気伝導率を上げるために粘度が低い材料を使用します。

 

電池に使用される粘度が低い材料として、鎖状のカーボネート系材料、DMC(ジメチルカーボネート)、
EMC(エチルメチルカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)が挙げられます。

 

これらの材料は粘度は高いのですが、比誘電率が低い傾向にあり、比誘電率が高い
環状のカーボネート系材料と混合し、使用されます。

 

DMC(ジメチルカーボネート)、EMC(エチルメチルカーボネート)、DEC(ジエチルカーボネート)
の物性はこちらで紹介しています。

 

良質なSEIを形成すること

 

一般的なリチウムイオン電池では負極に黒鉛を使用することが多く、黒鉛負極を使用した場合は、
初回充電時に負極活物質表面にSEI(固体電解質相)と呼ばれる皮膜を形成します。

 

負極活物質の表面に形成され、電解液の分解を抑制しLiイオンのみを通す役割を持ちます。

 

Liイオンを通すため、このSEIの形成の仕方が悪いと、電池の内部抵抗が大きくなります。

 

また、SEIは電解液の分解を抑制するといっても速度論的に抑制しているだけであり、
非常にゆっくりではありますが電解液が分解し、SEIとして分解物が堆積していきます。

 

これが電池の劣化(容量低下、抵抗上昇)の原因の一つとなるため、良質なSEIを作ることは
内部抵抗の低減だけでなく、寿命特性の向上にもつながります。

 

良質なSEIを形成するために上に紹介した

 

・環状系カーボネート(ECやPC等)
・鎖状カーボネート(DMC、EMC、DEC等)

 

の他に易還元性(還元されやすい)材料であるVCやFECといった添加剤を0.X%〜数%添加します。

 

 

安全性が高いこと

 

 

あとは低コスト。

 

 


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