レイノルズ数、ファニングの式とは?導出方法と計算方法【粘性力と慣性力の比】
当サイトのメインテーマであるリチウムイオン電池の性能として内部抵抗やサイクル寿命、フロート寿命特性、過充電を始めとした安全性などが挙げられます。
そして、上述の各パラメータに影響を与える電池の設計パラメータとして、電極の多孔度や電極を構成する活物質自体の多孔度や細孔径と呼ばれるものがあります。
さらに、細孔内の吸着や流体の移動現象を解析することがリチウムイオン電池の性能向上につながり、その解析を行う際に、化学工学、特に移動現象(流体力学)に考え方を使用する場合があります。
こちらでは化学工学における重要な用語であるレイノルズ数について解説しています。
・レイノルズ数(Re)とは?導出方法は?
・レイノルズ数(Re)の求め方は?【演習問題】
・ファニングの式とは?計算方法は?【演習問題】
というテーマで解説していきます。
レイノルズ数(Re)とは?導出方法は?
レイノルズ数とは以下で表される慣性力と粘性力の比を表した無次元数のことを指します。
良く円管内を流れる流体においてこのレイノルズ数を使用することが多く、層流になるか、乱流になるかの目安を示す値とも言えるでしょう。
Re = ρ u D / µ で表されます(Reはレイノルズ数、ρは流体の密度、uは流体の平均速度(流量/断面積)、Dは円管の直径、µは粘度)。
目安としてはReが2300以下では層流、2300~4000程度では層流と乱流が混じる領域、4000以上では乱流となることが知られています。
またレイノルズ数Reの導出方法については以下の通りです。
上述のよう、レイノルズ数は慣性力と粘性力の比という観点から導出していきます。
また、単位面積当たりの流体の慣性力としては運動量に相当すると考えてよく、ρu^2となります。
また、単位面積当たりの流体の粘性力としては、ニュートン粘性の法則によりニュートン流体においてはµdu/dyという式が成り立ちます。円管内の速度と直径を考慮しますと、µ u/Dとなります。
よってRe=慣性力/粘性力=ρu^2 / (µ u/D) = ρ u D / µとなります。
関連記事
多孔度とは?多孔度の計算方法は?
細孔径とは?
密度と比重の違いは?
円管における層流の速度分布を計算する方法
ヌッセルト数、プラントル数、グラスホフ数の定義
レイノルズ数(Re)の求め方は?【演習問題】
演習問題
レイノルズ数に慣れるためにも演習問題で実際にレイノルズ数を計算してみましょう。
直径0.02mの円管内を密度1g/cm^3である水が速度0.3m/s で流れているとします。
粘度が1mPa・sであるとしてReを計算しましょう。
解法
Re =ρuD / µ= 1000 kg/m^3 × 0.3m/s × 0.02m ÷ 1/1000 m・s/kg = 6000となり、乱流となることがわかります。
単位換算が複雑ですので、いくつか問題を解いて慣れると良いでしょう。
関連記事
多孔度とは?多孔度の計算方法は?
細孔径とは?
密度と比重の違いは?
円管における層流の速度分布を計算する方法
ヌッセルト数、プラントル数、グラスホフ数の定義
ファニングの式(乱流でのファニングの式)とは?計算方法は?【演習問題】
配管内の流体などについて考える際に、レイノルズ数と同等に重要な式としてファニングの式というものがあります。
ファニングの式とは、「配管内などを流れる流体の圧力損失⊿Pや摩擦損失」と「流速や配管の長さや内径など」の関係を表した式であり、以下の式で定義されます。
乱流による領域では以下のファニングの式で圧力損失を計算することが可能です(後程解説しますが、層流領域では式が異なります。まずは乱流でのファニングの式を考えていきましょう))。
また、ファニングの式中にある摩擦係数fは実験式であるブラシウスの式で算出することにしましょう(実験式であり、およそRe = 100000以下で成立するとされています)
実際にファニングの式を利用した計算問題を解き、どのように圧力損失や摩擦係数が算出されるか確認していきましょう。
(※レイノルズ数や以下の摩擦係数、摩擦損失、圧力損失などの機械的損失の計算には、複雑な単位換算があるためにミリ、マイクロ、ナノといったSI接頭後の変換をきちんとできるようにしましょう。)
例題
ある管の内径が50mmで中に流れる流体(水とします)の密度が1 g/cm^3 (1kg/m^3)であり、粘度が1 × 10^ -3 Pa・sであり、流量が3.0 × 10^-3 m^3/s で流れているとします。
この液体が曲がることなく300m移動する際の圧力損失⊿Pと摩擦損失Fを計算してみましょう。
解答
ファニングの式は層流か乱流かで求める値が異なるために、まずレイノルズ数Reを算出する必要があります。
まず、平均流速u は V / (D^2 π / 4) であるために、値を代入して、u = (3.0 × 10^-3 × 4) / ((50 × 10^-3 )^2 × 3.14 ) ≒ 1.53 m/sとなります。
Re = ρ u D / µ であるために (1 × 10^3) × (1.53 ) × (50 × 10^-3) / 1 × 10^-3 = 76500である、乱流となります。
また Re ≦ 10^5 であるために、ブラシウスの摩擦係数を適用し、 f = 0.004756と求められます。
最後にファニングの式に摩擦係数等の各値を代入しまして摩擦損失Fを算出しましょう。
Ff =2 × 0.004756 × 1.53^2 × 300 / ( 50 × 10^-3) = 133.6 J/kgとなります。
摩擦損失の単位は上述のよう[J/kg]となることに気を付けましょう。
最後に圧力損失⊿P = 摩擦損失F × 密度ρで計算できるため ⊿P = 133.6 × 1 × 10^3 = 133.6 KPaとなります。
圧力損失の単位は [Pa]や[KPa]となることに気を付けましょう。
関連記事
ミリ、マイクロ、ナノといったSI接頭後の変換方法は?
密度と比重の違いは?計算方法は?
多孔度とは?多孔度の計算方法は?
細孔径とは?
レイノルズ数、ファニングの式とは?導出方法と計算方法【粘性力と慣性力の比】 関連ページ
- 熱の伝わり方(伝熱の仕方)の種類
- フーリエの法則と熱伝導(伝導伝熱) 平板・円筒・球での熱伝導度(熱伝導率)の計算方法
- 多層平板における熱伝導(伝導伝熱)と伝熱抵抗 熱伝導度の合成
- ニュートン冷却の法則や総括伝熱係数(熱貫流率・熱通過率)とは?【対流伝熱】
- ニュートン粘性の法則の導出と計算方法 ニュートン流体と非ニュートン流体とは?【粘性係数(粘性率)と速度勾配】
- 放射伝熱(輻射伝熱)とは?プランクの法則・ウィーンの変位則・ステファンボルツマンの法則とは?
- 熱交換器の計算問題を解いてみよう 対数平均温度差(LMTD)とは?【演習問題】
- 比熱の測定方法(簡易版)
- 熱伝導率の測定・計算方法(定常法と非定常法)(簡易版)
- 熱拡散率(温度拡散率)と熱伝導率の変換・計算方法【演習問題】
- 反応速度と定常状態近似法、ミカエリス・メンテン式
- ラウールの法則とは?計算方法と導出 相対揮発度:比揮発度とは?【演習問題】
- 蒸気圧と蒸留 クラウジウス-クラペイロン式とアントワン式
- 流速と流量の計算・変換方法 質量流量と体積流量の違いは?【演習問題】
- 流束と流束密度の違いは? 流束と流束密度の計算問題を解いてみよう【演習問題】
- 流速と流束(フラックス)の違いは? 流束の種類
- 単蒸留とは?レイリーの式の導出と単蒸留の図積分を用いた計算問題【演習問題】
- フラッシュ蒸留と単蒸留とフラッシュ蒸留の違いは?【演習問題】
- 連続蒸留とは?蒸留塔の設計における理論段数・最小還流比とは?【演習問題】
- 蒸留塔における理論段数の算出方法(McCabe-Thiele法による作図)は?理論段数・最小還流比とは?【演習問題】
- ベルヌーイの定理とは?ベルヌーイの定理の問題を解いてみよう【演習問題】
- 反応器(CSTRとPFR)の必要体積の比較の問題【反応工学の問題】
- 逐次反応 複合反応の導出と計算【反応工学】
- 並列反応 複合反応の導出と計算【反応工学】
- 転化率・反応率・選択率・収率 導出と計算方法は?【反応工学】
- 平均滞留時間 導出と計算方法【反応工学】
- 反応次数の計算方法 0次・1次・2次反応【反応工学】
- 粒子の沈降とは?ストークスの法則(式)と終末速度の計算方法【演習問題】
- 含水率とは?湿量基準含水率と乾量基準含水率の違いは?
- 参考文献
- ヌッセルト数(ヌセルト数)・グラスホフ数・プラントル数
- レイリー数(レーレー数)とは?
- U字管マノメーターの原理と計算方法
- 層流・乱流・遷移領域とは?層流と乱流の違い
- 熱伝導率と熱伝達率の違い【熱伝導度や熱伝達係数との違い】
- フィックの法則の導出と計算【拡散係数と濃度勾配】
- 熱抵抗を熱伝導率から計算する方法【熱抵抗と熱伝導率の違い】
- 【ハ-ゲンポアズイユの定理】円管における層流の速度分布を計算する方法
- 質量保存則と一次元流れにおける連続の式 計算問題を解いてみよう【圧縮性流体と非圧縮性流体】
- 静圧と動圧の違い【位置エネルギーと運動エネルギー】
- ゲージ圧力と絶対圧力の違いは?変換(換算)の計算問題を解いてみよう【正圧と負圧の違いは?】
- 熱流束・熱フラックスを熱量、伝熱量、断面積から計算する方法【熱流束の求め方】