連続蒸留とは?蒸留塔の設計における理論段数・最小還流比とは?【演習問題】
当サイトのメインテーマであるリチウムイオン電池は高電圧、高容量、高エネルギー密度、長寿命などのメリットがあるためスマホバッテリーや電気自動車搭載電池、家庭用蓄電池などの採用されています。
ただ近年ではリチウムイオン電池の発火事故が急増しており、リチウムイオン電池の安全性(危険性)が認識されるようになり、この安全性の向上がリチウムイオン電池普及のための課題の一つであるといえます。
IOT化が今後進むにつれ、リチウムイオン電池の重要性がより増してくるため、リチウムイオン電池に関する知識を増やすとより快適な生活が送れるでしょう。
リチウムイオン電池だけでなく、製造業において化学工学の知識は不可欠です。例えば、リチウムイオン電池の製造工程としては、電極スラリーを混練する際の撹拌する力や与えるエネルギーの設計、電極スラリーを混練したあとの電極基材へ塗布した後のコーターでの乾燥条件の設計などに化学工学の知識が必要になる場合があります。
ここでは、化学工学における基礎技術である蒸留の中でも産業的に採用されている「連続蒸留における理論段数・最小還流比の算出方法」について解説していきます。
・McCabe-Thiele法(マッケーブシール法)による作図方法 蒸留塔における理論段数の求め方
・最小理論段数・最少還流比を求める方法
というテーマで解説しています。
McCabe-Thiele法(マッケーブシール法)による作図方法 蒸留塔における理論段数の求め方
連続蒸留(Flash Distilation)における考え方や計算式の立式の仕方はこちらで解説していますが、ここでは具体的にMcCabe-Thiele法(マッケーブシール法)と呼ばれる蒸留塔における理論段数を求める方法について解説していきます。
McCabe-Thiele法(マッケーブシール法)の考え方は複雑そうに見えるだけで方法は意外とシンプルです。まずは、下図のように平衡曲線とx-yの対角線、濃縮部操作線、回収部操作線をひきます。
ここで、濃縮部操作線と対角線の交点を一般的にD点とよび、ここから作図を始めていきます。
D点から真横に引き、気液平衡曲線と交わるところに1段目を表す1と振るといいです。次に、1点から真下におろし、濃縮部操作線を交わったら、また真横にひき、気液平衡曲線と交わるところを2点としましょう。
これを繰り返します。すると原料供給段を通り過ぎていくので、今度は濃縮部操作線ではなく、回収部操作線との交わりに着目して、同じ操作を繰り返します。
最後は缶出液の液組成xwと対角線の交点であるW点まで達しましたら、作図終了でこのときの段数が蒸留におけるステップ数(s)とよびます。
理論段数(n)がこのステップ数 - 1をした値であり、記号では n = s -1 であらわすことが出来ます。
以下にMcCabe-Thiele法(マッケーブシール法)による作図例を示しましたので、参考にしてみてください。
以下では、ステップ数は7であり、理論段数は7 - 1 =6となります。
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最小理論段数・最小還流比を求める方法
次に最小理論段数というものを考えていきましょう。
最小理論段数とは、基本的に還流比Rを大きくしていき、無限大にした場合の理論段数といえます。Rが無限大の場合は、濃縮部操作線も回収部操作線も対角線と同じになり、以下のようにMcCabe-Thiele法(マッケーブシール法)で作図をした場合と同じになります。
すると、最小理論段数は以下の例では、6-1の5段と計算できます。
逆に最小還流比とは、還流比を小さくしていった場合の最小値のことを指します。還流比Rを小さくしていくと、濃縮部操作線と回収部操作線の交点が気液平衡曲線とq線の交点と一致します。
この時の還流比Rが最小還流比です。
濃縮部操作線の傾きは R/R+1 であり、これが (xd,xd)と(xc,yc)の傾きと一致するといえます。
式にすると以下のようになります。
これをとくと、最小還流比は R min = (xd - yc) / (yc - xc)と求めることができます。
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