クロノポテンショメトリ―の原理と測定結果の例
電気化学の測定法として有名な測定方法のサイクリックボルタンメトリーの原理、測定結果例やリニアスイープボルタンメトリー(LSV)、クロノアンぺロメトリ-(CA)などと同様に、クロノポテンショメトリ-という測定方法があります。
このページでは、
・クロノポテンショメトリ-の原理
・クロノポテンショメトリ-の測定、解析結果の例
について解説しています。
クロノポテンショメトリ-の原理
クロノポテンショメトリ―(Chronopotentiometry:CP)とは、各用語に分けると各々
Chrono-:時間の、potentio:電位、metry:測定を意味しています。
つまり、クロノポテンショメトリ-とは言葉のままで訳してみると、時間に対する電位の測定を行う方法と言え、これから派生して、電流を変化させた際の電位の経時変化の測定を行う方法と言えます。
クロノアンぺロメトリ-(CA)の電位測定版とも言えるでしょう。
具体的にはクロノポテンショメトリ―では、電流を指定の値に急遽変化させた際、応答する電位の経時変化を測定する方法と言えます。
電気化学的な各情報、例えばCAやCVにおいても測定できる反応系における拡散係数や、酸化体、還元体の濃度、電流値を変化させてから電極表面の反応物濃度が無くなるまでにかかる時間などを知ることができます。
また、電池や電池の構成電極(正極や負極)に対してCPを行う、つまり一定の電流値を流した際の電位の挙動をということは、単純にCC充電やCC放電を行っていることと同じであるとも言えます。
CVやLSV、CAと同様に、一般的な装置自体の仕組みとしては、ポテンショスタット(定電位電解装置)により三電極セルに対して電位変化を行い、得られる反応電流の情報をポテンショスタットに繋がれたレコーダーで解析します。
また、ポテンショスタットで電位を走査するための関数発生器もポテンショスタットについています。
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クロノポテンショメトリ-を行った際、横軸に電位、縦軸に反応電流値を取った曲線が得られます。
この曲線をクロノポテンショグラムと呼びます。
リチウムイオン電池に関連する測定としては、上述のように正極や負極や電池としてのCC充電、CC放電時の充放電曲線が得られることと同等であるために、その曲線から分極(過電圧)特性の測定であったり、測定条件によっては電池や電極の容量の測定を行うことが出来ます。
リチウムイオン電池の正極や負極基材に対して電位を変化させた(徐々に上げていく)クロノアンぺロメトリ―(CA)を行い、立ち上がり電流が見え始めた電位を測定することにより、試料の溶解電位の測定や分極(過電圧)特性の測定を行うことが出来ます。
また、電池に対してCV充電やCCCV充電を行った際にCVモードとなってから、絞られる電流の経時変化を見ることと似たような測定方法と言えるでしょう。
以下のような実験を行い、電池の正極に対して溶液系でCPを行うとしましょう。
測定サンプル
正極活物質にコバルト酸リチウム、導電助剤にケッチェンブラック、バインダーにPVDFを使用し、組成が90:5:5である正極のCPを、電解液にリチウムイオン電池で一般的に使用される有機系電解液を用いて行うとします。
三電極法により測定、参照極、対極にはLi金属を使用し、測定を行うとします。
ここで、設定電流が大きすぎたり設定時間が長すぎると電池における過充電状態に近い現象となるため、正極の電位が上昇し過ぎ、電解液の電位窓を超え、酸化分解して危険な状態となる場合がありますので気を付けましょう。
すると、電流変化、それに応答する電位変化のプロファイル例は以下の通りとなります。
正極の充電電気量に対する開放電位の曲線(電池のおけるSOC-OCV曲線のようなもの)と、実際の測定電位を比較し、その差分(過電圧)がオームの法則によるIR分に相当することから、電極の抵抗値の測定することなどが可能です(※電池におけるSOC-OCV曲線から充放電曲線を予想する方法はこちらで解説しており、この作業の逆に近いことをすることと同等です)。
また、上述の反応物が無くなるまでの時間(遷移時間)の算出としましては、サンドの式と呼ばれる
iτ^0.5/Co = nFA π^0 5 Do^0.5 /2 から算出することが出来ます。
( τ:遷移時間、C0:反応物の初期濃度、Do:反応物の拡散係数であり、これらが既知の場合に算出可能です。ただし、上述の例でLi金属を対極に使用していると正極の受け入れ量の方が小さい場合が大半であるため、過充電に近くなるため、今回の系での測定は厳しいと言えるでしょう)
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