イオンとはそもそも何のこと?(その1)イオン発見の歴史と原子の構造
このページでは、イオンとはそもそも何のことか?考える上で必要な知識である
・イオンが発見される歴史(電気分解と元素、イオンの発見)
・原子の構造
・原子の構造と原子番号
について解説しています。
イオンの歴史概略(電気分解と元素、イオンの発見)
当サイトでは、メインテーマとしてリチウムイオン電池を扱っています。
それでは、そもそもこの「イオン」とは何なのか、イオンの考え方が取り入れられた背景を歴史からから解説していきます。
実は、電池や電気化学と関係が深いファラデーの法則でも有名なマイケル・ファラデーさんにより、「イオン」という言葉は命名されています(1984年)。
そして、命名されるきっかけとして、アレッサンドロ・ボルタさん1800年初頭に開発したボルタ電池も関連しています。
あるゆる化学者がこの流れに乗り、その電池反応と逆向きの反応である電気分解により物質が元素に分解できるということが徐々に明かされていったのです。
結果として、いくつかの元素、例えばカリウム(K)やカルシウム(Ca)などが発見されました背景があります。
しかし、この当時は「通電自体がどのような現象であるのか?」「電子とはいったい何なのか?」など解明されていないことが多かったようです。
その中でも、ファラデーさんはイオンの実体はわからないものの、電気分解時液体中の物質が何かに分かれれ、正極、負極の各々に向かうということを捉えていました。
(水の電気分解はこちらのページで解説しています。)
さらに、化学反応の反応速度を数式化したアレニウスの法則で有名なスバンテ・アレニウスさんにより、イオンの実体は電荷を帯びた原子もしくは原子の集まりであるという仮説が立てられ、
後に原子の構造が明らかになるに伴い、この仮説が正しいことが証明されたようです。
(この当時は原子は最小のそれ以上分割できない単位と考えられており、 その原子が電荷を帯びること自体が容易に想像できないものだったようです)。
次に、原子の構造について解説します。
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原子の構造
原子の構造は下図の通りであり、下図全体が原子全体を表しており
陽子、中性子、電子から構成されます。原子の中央部分に位置するものを原子核と呼びます。原子核は陽子と中性子で作られています。
電子はイメージ図のよう、外側の軌道(黒線)を回っているように簡易的に記載しています。
次に、原子の構造に関係する各パラメータを以下にまとめています。
簡単にポイントを解説します。
・陽子:原子核を構成し、物質により数が異なります。 質量は中性子と同程度です。(若干軽い)。
電荷は言葉からイメージできるように陽(正、+)で1.602 × 10^19 C(クーロン)です。
また、この値を電気素量eと呼び、気素量は電気量の基礎となる物理量とされています。
・中性子:原子核を構成し、物質により数が異なります。
質量は陽子と同程度(若干重い)。 電荷は0、つまり電気的に中性のため、中性子と呼びます。
・原子核:陽子と中性子から構成され、これらの数は物質により変化します。よって、質量は物質により異なり、大きさは10^-15~10^-14 m 程度です。
・電子:ある原子において陽子の数と電子の数は同じです。質量は陽子や中性子より小さく、電荷は電気素量の符号を-にしたものです。体積は測定することが出来ていません。
詳細は下記に示す原子の構造と原子番号において解説しています。
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原子の構造と原子番号、質量数
Liを例として、原子番号と質量数について解説します。
右に原子番号と質量数の表記方法について解説しました。
原子番号は元素を記載した左下に表記し、これは元素により数が決まっており、
Liでは3 となります。
この原子番号は元素の陽子の数のことでもあり、また原子において
陽子の数=電子の数であるため、電子の数も原子番号と同じです。
質量数は元素を記載した左上に表記し、こちらも元素により数が決まっており、
Liでは7 となります(6となるLiも存在し(同位体と呼びます)ますが、メインは7のリチウムです)。
この質量数は原子核を構成する粒子の数のことでもあり、陽子の数+中性子の数です。
物質ごとの原子番号等を表にしたものを周期表と呼び、縦列や横列にも関係性があり、その関係を理解しやすいものになっています
原子の構造のおおよそが理解できましたら、あとは電子配置が理解できれば、イオンの構造も理解できるようになります。
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