食塩水の電気分解における電極での反応式(イオン式) 陽極で塩素が発生し、陰極で水素が発生する理由

食塩水の電気分解における電極での反応式(イオン式) 陽極で塩素が発生し、陰極で水素が発生する理由

当サイトでは記事内に広告を含みます


食塩水の電気分解における電極での反応式(イオン式) 陽極で塩素が発生し、陰極で水素が発生する理由

 

さまざまな反応の電気分解について理解することは重要であり、中でも食塩水(NaCl溶液)の電気分解は頻出です。

 

この食塩水の電気分解の仕組みについて理解していますか。

 

ここでは、「食塩水の電気分解の各電極での反応式(水素や塩素発生)」「陰極では水酸化ナトリウムができアルカリ性となるのか「」陽極では塩化水素や次亜塩素酸が生成しているのか」ということについて解説していきます。

 

・食塩水の電気分解の電極と反応式(イオン式)

 

・食塩水の電気分解のとイオン交換膜法(水酸化ナトリウムの工業的製法)

 

というテーマで解説していきます。

 

 

食塩水の電気分解の電極と反応式(イオン式)

 

電解装置に不活性な電極(Ptなど)を用い、比較的濃い濃度の食塩水(NaCl溶液)の対して外部から一定以上の電圧をかけると電気分解が起こります。

 

食塩水の電気分解によって、起こる陰極と陽極の反応式(イオン式)は以下の通りです。

 

陽極:2Cl- → cl2 + 2e-
陰極:2H2O + 2e- → H2 + 2OH-  という反応が起こります。なお、陰極では、Na+イオンはイオン化傾向が非常に大きいため反応せず、水が代わりに反応することを覚えておきましょう

 

 

つまり、陽極からは塩素が発生、陰極からは水素が発生するのです。

 

この反応をイメージ図にすると、以下のようになります。

 

 

なお、陽極付近では塩素イオンが寄ってきており、塩酸(塩化水素)と次亜塩素酸(HClO)の濃度が高い状態となっています。

 

一方で、陰極付近にはOH-が生成されており、かつ元の溶液中にNa+が含まれているために、水酸化ナトリウム溶液に近い状態となっているのです。つまり、アルカリ性となっています。

 

よって、アルカリ性の検出薬であるフェノールフタレインを滴下させると、赤色に変色させることができます。

 

また、身近にNaClを含む液体である海水などでも、電位分解すれば上述と同様の反応が起こります。

 

関連記事

 

活性、不活性とは?
水の電気分解の反応式や仕組み
塩化銅溶液の電気分解

 

 

 

食塩水の電気分解のとイオン交換膜法(水酸化ナトリウムの工業的製法)

 

食塩水の電気分解において、間に隔膜としてイオン交換膜(陽イオン交換膜)をとりつけることで、水酸化ナトリウム(NaOH)を製造することができます。

 

上述にて、陰極ではNa+(ナトリウムイオン)とOH-(水酸化物イオン)が反応することによって水酸化ナトリウムが生成すると記載しました。このとき、OH-イオンが陰極にて生成されると、電極付近の濃度が高まるため、濃度が薄い方(陽極)へ移動していきます。

 

すると、水酸化ナトリウムの濃度が下がってしまうのです。そこで、効率よくナトリウムを生成させるために、OH-の移動を制限しようと陽イオン交換膜で隔てるのです。結果として、効率よくNaOHを抽出することができます。

 

これが食塩水の電気分解における水酸化ナトリウムの工業的な製法であるといえます。

 

 

関連記事

 

活性、不活性とは?
水の電気分解の反応式や仕組み
塩化銅溶液の電気分解

食塩水の電気分解における電極での反応式(イオン式) 陽極で塩素が発生し、陰極で水素が発生する理由 関連ページ

イオンとはそもそも何のこと?その1 イオン発見の歴史と原子の構造と原子番号、質量数
酸化とは?還元とは?酸化還元の定義その1、その2
酸化還元の定義その3とまとめ
電池とは?ボルタ電池の構成と反応
ダニエル電池の構成・仕組み・反応式は?正極・負極の反応は?素焼き板の役割は?
イオン化傾向とは?
【手計算・Excel】pHとは?計算方法は?
同位体の存在比とは?計算問題を解いてみよう【銅や塩素の質量】
分子量の求め方 アンモニア・メタン・尿素などの分子量を計算してみよう【演習問題】
原子量・分子量・式量の違いは?
アレニウス・ブレンステッド・ルイスの酸・塩基の定義と違いは?
電池の電極の質量変化を計算してみよう【ダニエル電池の質量変化】
絶対質量と相対質量 相対質量の計算方法(絶対質量との変換)
ルシャトリエの法則(原理)とは?
電気分解とは?塩化銅水溶液(CuCl2)における電気分解の反応式 陽極・陰極での反応式 陽極、陰極、正極、負極の違いと覚え方(見分け方)
水の電気分解の仕組み・反応式 陽極・陰極での反応式 水酸化ナトリウムを入れる理由は?
ヘスの法則と熱化学方程式の関係 計算問題を解き、反応熱を求めてみよう【演習問題】
ボルンハーバーサイクルとは?イオン結晶の格子エネルギー(格子エンタルピー)を計算してみよう
同位体と同素体の違いは?
物質量とモル質量の違いは?計算問題を解いてみよう【演習問題】
乾燥剤と気体の酸性・塩基性・中性とは?
気体の酸性度 酸性気体、中性気体、塩基性(アルカリ性)気体
潮解性・吸湿性・脱水性の違いは?
生石灰と消石灰とは?分子式(化学式)や用途の違い 生石灰と水との反応式は?
ソーダ石灰の性質や塩基性(アルカリ性)の乾燥剤としての役割(アンモニアや二酸化炭素は吸収できる?)
単体、化合物、純物質、混合物の定義や違い
気体の水溶性と気体の収集方法(上方置換、下方置換、水上置換)
塩化水素が水に溶けやすい理由は?
アンモニアが水に溶けやすい理由は?
「原子量・分子量・式量」とモル質量との違い
物質量(モル:mol)とアボガドロ数の違いや関係は? 計算問題を解いてみよう
コロイドの性質 チンダル現象・ブラウン運動・電気泳動とは?
クメン法とは?クメンヒドロペルオキシドを経由してフェノールを合成する方法
過酸化水素に二酸化マンガンを加えた時の反応式は?
疎水コロイド・親水コロイド・保護コロイド 凝析と塩析とは?
十酸化四リンの化学式、分子式(P4O10)、構造式は? 十酸化四リンと五酸化二リンの違いは?
乾燥剤である十酸化四リンが使用できない物質は? 潮解性や脱水作用を持つのか?
リンの同素体 黄リンと赤リンの違いは?
分子結晶と共有結晶(共有結合性結晶)の違いは?
酸素の同素体 酸素とオゾンの違いは?
炭素の同素体 黒鉛(グラファイト)・ダイヤモンド・フラーレンの違いは?
浸透圧とファントホッフの式 計算問題を解いてみよう【演習問題】
イオン結晶とイオン結合 イオン結晶の融点・沸点・電気伝導性などの性質
金属結晶と金属結合 金属結晶の融点・沸点・電気伝導性などの性質
自由電子と価電子の違いは?
共有結晶(共有結合結晶)と共有結合 共有結晶の融点・沸点・電気伝導性などの性質
分子結晶と分子間力 分子結晶の融点・沸点・電気伝導性などの性質
配位結合とは?配位結合の強さと矢印の書き方 共有結合・イオン結合・水素結合との違いは?
金属の配位結合と錯イオン(錯体) 中心金属、配位子、配位数とは?
二酸化マンガンと塩酸の反応式は?【半反応式から解説】

HOME プロフィール お問い合わせ