金属の配位結合と錯イオン(錯体) 中心金属、配位子、配位数とは?
高校化学においてよく結合の種類に関する問題が出題されます。
結合には、イオン結合、金属結合、共有結合、配位結合、分子間力などがあります。中でも、配位結合によって構成される物質として錯イオンや錯体と呼ばれるものがあります。この錯イオンや錯体について知っていますか。
ここでは、金属の配位結合や錯イオンに関する内容について解説していきます。
・金属の配位結合と錯イオン・錯体
・錯イオンにおける中心元素イオン、配位子、配位数とは
・錯イオンの中心イオン、配位数、立体構造、命名法の具体例
というテーマで解説していきます。
金属の配位結合と錯イオン・錯体
配位結合の詳細についてはこちらで記載していますが、配位結合について簡単に解説しますと、孤立共有電子対をもつ物質と電子対を持たない物質が、孤立電子対を通して結びつく結合のことを指します。
以下のようなものです。
配位結合をする例としては、アンモニアなどの孤立電子対を有する物質において、配位結合を形成しアンモニウムイオンになるケースもあります。
このように配位結合がおこりますが、中心元素として金属イオンが配置され、その周囲を配位結合によって結合した複数の別のイオンによって囲まれることがあります。これ特に、錯イオンを呼びます。
錯イオンは錯体と呼ばれる金属元素を中心としてその周りを別の物質で囲まれている構造の一種であるといえます。
この錯イオンについて掘り下げて解説していきます。
関連記事
イオン結晶・イオン結合とは?
金属結晶と金属結合
共有結晶と共有結合
分子結晶と分子間力
配位結合とは?
錯イオンにおける中心元素イオン、配位子、配位数とは
それでは、錯イオンに関する用語について確認していきます。
錯イオンにおいて、中心には位置されるイオンは基本的に金属元素イオンです。具体的には、Ag+、Cu2+、Zn2+、Ni2+、Co2+、Co3+、Fe2+、Fe3+などがあげられます。他にも、Pb2+、Sn2+といった遷移金属金属イオンが配置されます。
そして、これらの中心金属イオンの周囲に配位する(配位結合で結びつく)ものを配位子と呼びます。
後ほど詳しく解説しますが、中心金属イオンの種類によって、配位子の数やその分子の形は変化します、この金属イオンの周囲の配位子の数のことを配位数とよびます。
それでは、錯イオンの中心イオン、配位数、立体構造、命名法の具体例を考えていきましょう。
関連記事
イオン結晶・イオン結合とは?
金属結晶と金属結合
共有結晶と共有結合
分子結晶と分子間力
配位結合とは?
錯イオンの中心イオン、配位数、立体構造、命名法の具体例
まずは、錯イオンの命名の仕方から考えていきましょう。
例えば、代表的な錯イオンである[Fe(H2O)6]3+を例に名前の付け方を考えていきます。基本的には、かっこの中の後ろから順に命名し、その後にかっこの外のイオンの数を記載するような流れですl。
つまり、配位数→配位子の種類→中心元素イオン→外のイオンの数を()で表せばいいです。
上の例であれば、6に相当するギリシャ数字の「ヘキサ」、配位子の種類ではH2Oに相当する「アクア」、中心元素ではそのまま鉄、最後のイオンの数(Ⅲ)イオンと表記したものをつなげてましょう。
すると、[Fe(H2O)6]3+はヘキサアクア鉄(Ⅲ)イオンと命名できるわけです。
以下に、中心金属イオンの配位数、配位子の種類、立体構造についてまとめていきますので、参考にしてみてくだささい。
配位数と立体構造
錯イオンにおける廃位数は2、4、6となることがほとんどです。よって、2に相当するジ、4にあたるテトラ、6にあたるヘキサを覚えておけばいいです
配位数が2であれば直線系、4であれば正方形もしくは正四面体、6であれば正八面体となります。
配位子の種類と名称
配位子の種類の命名は以下の表を覚えておきましょう。
アンモニアのアンミン、水のアクア、塩化物イオンのクロロ、水酸化物イオンのヒドロキシド、シアン化物イオンのシアニドなどが代表的です。
金属の配位結合と錯イオン(錯体) 中心金属、配位子、配位数とは? 関連ページ
- イオンとはそもそも何のこと?その1 イオン発見の歴史と原子の構造と原子番号、質量数
- 酸化とは?還元とは?酸化還元の定義その1、その2
- 酸化還元の定義その3とまとめ
- 電池とは?ボルタ電池の構成と反応
- ダニエル電池の構成・仕組み・反応式は?正極・負極の反応は?素焼き板の役割は?
- イオン化傾向とは?
- 【手計算・Excel】pHとは?計算方法は?
- 同位体の存在比とは?計算問題を解いてみよう【銅や塩素の質量】
- 分子量の求め方 アンモニア・メタン・尿素などの分子量を計算してみよう【演習問題】
- 原子量・分子量・式量の違いは?
- アレニウス・ブレンステッド・ルイスの酸・塩基の定義と違いは?
- 電池の電極の質量変化を計算してみよう【ダニエル電池の質量変化】
- 絶対質量と相対質量 相対質量の計算方法(絶対質量との変換)
- ルシャトリエの法則(原理)とは?
- 電気分解とは?塩化銅水溶液(CuCl2)における電気分解の反応式 陽極・陰極での反応式 陽極、陰極、正極、負極の違いと覚え方(見分け方)
- 水の電気分解の仕組み・反応式 陽極・陰極での反応式 水酸化ナトリウムを入れる理由は?
- ヘスの法則と熱化学方程式の関係 計算問題を解き、反応熱を求めてみよう【演習問題】
- ボルンハーバーサイクルとは?イオン結晶の格子エネルギー(格子エンタルピー)を計算してみよう
- 同位体と同素体の違いは?
- 物質量とモル質量の違いは?計算問題を解いてみよう【演習問題】
- 乾燥剤と気体の酸性・塩基性・中性とは?
- 気体の酸性度 酸性気体、中性気体、塩基性(アルカリ性)気体
- 潮解性・吸湿性・脱水性の違いは?
- 生石灰と消石灰とは?分子式(化学式)や用途の違い 生石灰と水との反応式は?
- ソーダ石灰の性質や塩基性(アルカリ性)の乾燥剤としての役割(アンモニアや二酸化炭素は吸収できる?)
- 単体、化合物、純物質、混合物の定義や違い
- 気体の水溶性と気体の収集方法(上方置換、下方置換、水上置換)
- 塩化水素が水に溶けやすい理由は?
- アンモニアが水に溶けやすい理由は?
- 「原子量・分子量・式量」とモル質量との違い
- 物質量(モル:mol)とアボガドロ数の違いや関係は? 計算問題を解いてみよう
- コロイドの性質 チンダル現象・ブラウン運動・電気泳動とは?
- クメン法とは?クメンヒドロペルオキシドを経由してフェノールを合成する方法
- 過酸化水素に二酸化マンガンを加えた時の反応式は?
- 疎水コロイド・親水コロイド・保護コロイド 凝析と塩析とは?
- 十酸化四リンの化学式、分子式(P4O10)、構造式は? 十酸化四リンと五酸化二リンの違いは?
- 乾燥剤である十酸化四リンが使用できない物質は? 潮解性や脱水作用を持つのか?
- リンの同素体 黄リンと赤リンの違いは?
- 分子結晶と共有結晶(共有結合性結晶)の違いは?
- 酸素の同素体 酸素とオゾンの違いは?
- 炭素の同素体 黒鉛(グラファイト)・ダイヤモンド・フラーレンの違いは?
- 浸透圧とファントホッフの式 計算問題を解いてみよう【演習問題】
- イオン結晶とイオン結合 イオン結晶の融点・沸点・電気伝導性などの性質
- 金属結晶と金属結合 金属結晶の融点・沸点・電気伝導性などの性質
- 自由電子と価電子の違いは?
- 共有結晶(共有結合結晶)と共有結合 共有結晶の融点・沸点・電気伝導性などの性質
- 分子結晶と分子間力 分子結晶の融点・沸点・電気伝導性などの性質
- 配位結合とは?配位結合の強さと矢印の書き方 共有結合・イオン結合・水素結合との違いは?
- 食塩水の電気分解における電極での反応式(イオン式) 陽極で塩素が発生し、陰極で水素が発生する理由
- 二酸化マンガンと塩酸の反応式は?【半反応式から解説】