直流と交流、交流のグラフ(周波数と周期、実効値)
最近では、スマホ向けバッテリーや電気自動車向けバッテリー、家庭用蓄電池などにリチウムイオン電池が採用されています。
リチウムイオン電池における性能に作動電圧やエネルギー密度というパラメータが挙げられ、これらが上がるほど一般的に良い電池と考えれれています。
作動電圧やエネルギー密度を上げるためには、内部抵抗と呼ばれるものを下げる必要があり、内部抵抗の測定として直流を流し測定する直流抵抗、交流を流して測定する交流抵抗に分けられます。
他にも、リチウムイオン電池の電気化学的な解析方法の一つに交流インピーダンス法と呼ばれるものもあります。
これらの測定方法を理解するためにも、直流とは何か?交流とは何か?その違いについて理解する必要があり、こちらのページで解説しています。
・直流と交流
・交流の基礎知識
・交流において実効値の√2倍したものが最大値である理由は?
・交流100Vとは何のことを表すのか?最大値は?
・正弦波交流電圧(起電力)の計算問題【演習問題】
というテーマで解説しています。
直流と交流
身近に生活している中で直流という言葉や、交流という言葉を耳にしたことがあるのではないでしょうか?
電池を用いた回路では、+極から-極に向かって一定の電流が流れます。このように電流の向きや大きさが一定である電流のことを直流と呼びます。
(電池の直流回路図中の記号はこちら で解説しています。)
これに対して、電流の流れる向きと電圧の大きさが一定の周期で変化する電流のことを交流と呼びます。
身近なところですと家に備わっているコンセントでは、交流が流れています。
大学課程の電気化学という分野のある反応の解析方法である(例えば電池の内部抵抗を分離する方法として)交流インピーダンス法を行う際にもこの交流は使用されています。
また、抵抗やコンデンサーに交流を流した際の電流と電圧の位相差などの関係はこちらで解説しています。
関連記事
電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)の特徴
家庭用蓄電池とは?設置のメリット、デメリット
リチウムイオン電池の反応と特徴
作動電圧、内部抵抗、出力とは?
エネルギー密度とは?
直流抵抗(DCR)と交流抵抗(ACR)の違い
交流インピーダンス法とは?
抵抗やコンデンサーと交流の関係は?
コイルと交流の関係は?
角速度とは?
交流の基礎知識
交流の回路中の記号
まず、交流の回路中の記号を下記に示します。
(※ちなみに直流回路における電池の回路図中の記号はこちらで解説しています)
交流を表す式とグラフ
そして、交流を流した際の電圧と時間の関係式は以下のようになっています。
(上述しましたように電圧の大きさと電流の流れる向きが一定の周期で変化します。)
周波数と周期の関係
この図の波一つ分に相当する、交流が1回振動するのにかかる時間を周期と呼び、Tで表されます。
周期は時間なので、単位[s]で表されます。
また、周期の逆数のことを周波数または振動数と呼び、
単位時間あたりに交流が振動する回数、つまり単位時間あたりの波の数を表します。
記号はf (=1 / T)で表し、単位は[Hz(ヘルツ)]または、周期の逆数でもあるため[s^-1]でもあります。
周波数は地域ごとに異なり、家庭用コンセントの場合、関東では50 Hz、関西では60Hz と
異なっているため、関東で使えていた製品がまれに関西で使えない場合もあります。
周期と各周波数の関係
角周波数ωは角速度ωと同じ意味であり、ωT = 2π、 T=2π/Tで表すことができます。
実効値と最大値(瞬時値)
交流では、上述のように電圧は時間とともに変化するため、直流のように~A流すといった明確な値をあげにくいです。そこで、直流と同程度のはたらきをするための値として実効値をいう概念があります。
詳細は下記に解説しますが、まず交流の電流、電圧と最大値と実効値と呼ばれる値の関係性は以下の通りです。
実効値を√2倍した値が最大値であり、最大値は別名瞬時値ともよばれます。
それでは、なぜ実効値に√2をかけたものが最大値になるのでしょうか? 以下で解説していきます。
関連記事
電気自動車(EV)やハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド自動車(PHEV)の特徴
家庭用蓄電池とは?設置のメリット、デメリット
リチウムイオン電池の反応と特徴
作動電圧、内部抵抗、出力とは?
エネルギー密度とは?
直流抵抗(DCR)と交流抵抗(ACR)の違い
交流インピーダンス法とは?
直流回路における電池の回路図中の記号は?
コイルと交流の関係は?
角速度とは?
交流において実効値の√2倍したものが最大値である理由は?
実行値がなぜ最大値をルート2で割るのかという理由を考えていきましょう。交流とこのルート2の問題では、電力が重要なポイントとなります。
電力を考えるために、交流における電圧を電流に変換しましょう。ここで、交流を流す抵抗の大きさをRとしオームの法則を用いて、電圧を電流に変換しましょう。
交流における電圧はV=Vmax sinωtであり、両辺をRで割ってみましょう。
するとV/R = Vmax/R sinωtとなり、V=RがIになることから I = Imax sinωtとなり電流に変換できます。
交流における電流と時間の関係を表したグラフは以下の通りです。
次に縦軸に消費電力P(=IV)をとり、横軸に時間をとったグラフを作成してみましょう。
実は消費電力の平均値、つまり電流と電圧の最大値の積の半分の値が、電流の実効値と電圧の実効値の積になっていると定義されています。
あとは、この等式を式変形することで実行値と最大値の関係を導出することができます。
このように、交流の電圧における実効値を導出することができました。これが交流において実効値と最大値の関係が√2で表される理由です。
同様に、V=IRのオームの法則を代入すると、交流の電流における実行値と最大値の関係を求めることができます。
(※ちなみに上の図で作成しているようなExcelを用いてサインカーブ・コサインカーブを描く方法はこちらで解説しています)
関連記事
電力、電力量、ジュール熱とは?
オームの法則とは?
Excelを用いてサインカーブ・コサインカーブを描く方法
角速度とは?
交流100Vとは何のことを表すのか?最大値(瞬時値)は?
よく家庭用の電源では交流100Vなどという表現を聞くことがあると思います。この交流100Vとは何のことを表しているのでしょうか?
実はこの交流100Vにおける100Vとは、先にも述べた実効値のことを表しています。
つまり、交流100Vの最大値(別名:瞬時値)は√2倍した値の約141Vとなります。
交流では電圧が変動することを頭に入れておきましょう。
このように、交流のように正弦波(サインカーブ)を描く問題のことを正弦波交流電圧の問題などとよぶことがあります。
関連記事
電力、電力量、ジュール熱とは?
オームの法則とは?
Excelを用いてサインカーブ・コサインカーブを描く方法
角速度とは?
正弦波交流電圧(起電力)の計算問題【演習問題】
それでは、実際に正弦波交流電圧(起電力)の問題を解いてみましょう。
例題
ある正弦波交流電圧における最大値が250Vである場合の電圧の実効値を計算しましょう。
解答
250 / √2 = 176.8 V となります。
関連記事
電力、電力量、ジュール熱とは?
オームの法則とは?
Excelを用いてサインカーブ・コサインカーブを描く方法
角速度とは?
直流と交流、交流の基礎知識 実効値と最大値が√2倍の関係である理由は? 関連ページ
- SI単位
- 密度とは?比重とは?密度と比重の違いは?【演習問題】
- ミリ、ミクロン、ナノ、ピコとは?SI接頭語と変換方法【演習問題】
- 電位とは何?電位の定義は?
- 電気と電荷、静電気力
- 電流と電荷(I=Q/t)、電流と電子の関係
- コンデンサーと交流
- 電圧とは何か?電圧のイメージ、電流と電圧の関係(オームの法則)
- 直列回路における合成抵抗の導出と計算方法【演習問題】
- 並列回路における合成抵抗の導出と計算方法【演習問題】
- 合成抵抗2(直列と並列が混ざった回路)
- 電力と電力量の違いは?消費電力kWと消費電力量kWhとの関係 WとWhの変換(換算方法) ジュール熱の計算方法
- ジュール熱とは?ジュール熱の計算問題を解いてみよう【演習問題】
- 水の温度上昇とジュールの関係は?計算問題を解いてみよう【演習問題】
- コンデンサーの容量の計算式と導出方法【静電容量と電圧・電荷の関係式】
- コンデンサーを直列接続したときの静電容量の計算方法【演習問題】
- コンデンサーを並列接続したときの静電容量の計算方法【演習問題】
- コンデンサーのエネルギーが1/2CV^2である理由 静電エネルギーの計算問題をといてみよう
- 磁場とは何か?
- 電流と磁場の関係(電流がつくる磁場)
- 電流が磁場から受ける力(フレミング左手の法則)
- ローレンツ力
- 電磁誘導とレンツの法則
- ファラデーの電磁誘導の法則
- 各種電磁誘導の問題の演習
- 磁束と磁束密度の定義・違いは?
- 相互誘導と自己誘導(相互インダクタンスと自己インダクタンス)
- コイルを含む回路、コイルが蓄えるエネルギー
- 抵抗、コンデンサーと交流抵抗、コンデンサーと交流
- コイルと交流、交流のまとめ
- 光のエネルギー
- 物質波とブラッグ反射(ブラッグの式)
- 気体分子運動論とは?
- 気体分子運動論とボルツマン定数
- 電流の定義のI=envsを導出する方法
- 角速度(角周波数)とは何か?角速度(角周波数)の公式と計算方法 周期との関係【演習問題】
- クーロンの法則 導出と計算問題を問いてみよう【演習問題】
- 電気回路に短絡している部分が含まれる時の合成抵抗の計算
- 角速度(角周波数)とは何か?角速度(角周波数)の公式と計算方法 周期との関係【演習問題】(コピー)
- 自由落下(自然落下)における速度は? 計算問題を解いてみよう【演習問題】
- ばね定数の公式や計算方法(求め方)・単位は?ばね定数が大きいほど伸びにくいのか?直列・並列時のばね定数の合成方法
- 距離(位置)、速度、加速度の変換方法は?計算問題を問いてみよう
- 静止摩擦係数と動摩擦係数の求め方 静止摩擦力と動摩擦力の計算問題を解いてみよう【演習問題】
- 電流計は直列につなぎ、電圧計は並列につなぐのはなぜか 電流計・電圧計の使い方と注意点
- 抵抗が3つ以上の並列回路、直列回路の合成抵抗 計算問題をといてみよう
- 単振動における変位・速度・加速度を表す公式と計算方法【sin・cos】
- ホイートストンブリッジにおける計算問題を解いてみよう【ブリッジ回路の解き方】
- メートルブリッジの計算問題を解いてみよう【ブリッジ回路の解き方】
- 単振動における運動方程式と周期の求め方【計算方法】
- 単振動におけるエネルギーとエネルギー保存則 計算問題を解いてみよう
- v-tグラフ(速度と時間の関係式)から変位・加速度を計算する方法【面積と傾きの求め方】
- 相対速度とは?相対速度の計算問題を解いてみよう【船、雨、0となるときのみかけの速度】
- ロケットなどで2物体が分裂・合体する際の速度の計算【運動量保存と相対速度】
- キルヒホッフの電流則(キルヒホッフの第一法則)とは?計算問題を解いてみよう
- 単振り子における運動方程式や周期の求め方【単振動と振り子】