【リチウムイオン電池の解析の予備知識】抵抗、コンデンサーと交流
最近では、スマホ向けバッテリーや電気自動車向けバッテリー、家庭用蓄電池などにリチウムイオン電池が採用されています。
リチウムイオン電池における性能に作動電圧やエネルギー密度というパラメータが挙げられ、これらが上がるほど一般的に良い電池と考えれれています。
作動電圧やエネルギー密度を上げるためには、内部抵抗と呼ばれるものを下げる必要があり、内部抵抗の測定として直流を流し測定する直流抵抗(DCR)、交流を流して測定する交流抵抗(ACR)に分けられます。
他にも、リチウムイオン電池の電気化学的な解析方法の一つに交流インピーダンス法と呼ばれるものもあります。
これらの測定方法を理解するためにも、交流とは何か?また、直流との違いについて理解する必要があり、以下で解説しています。
・抵抗と交流
・コンデンサーと交流
というテーマで解説しています。
抵抗と交流
直流と交流では、電圧や電流変化の仕方が異なるため、
抵抗やコンデンサー、コイルを流れる時も直流回路の時と扱いが異なります。
まずは、抵抗と交流について考えていきましょう。
交流電源の電圧がV = Vmax sin ωt [V] で変化するとします。
この時、オームの法則により、 I = Vmax sin ωt / R 、V0/Rを I0と置くと I = Imax sin ωt [A]となります。
sin関数の部分に着目しますと、電圧も電流も ωtであり、この部分のことを位相と呼びます。
抵抗を流れるときの交流は同位相(位相が同じ)であるため、同じタイミングで最大値と最小値を取り、
下のようなグラフのイメージになります。
次に解説する、コンデンサー、コイルを交流が流れる場合は、電圧と電流で位相がずれるため、どちらにずれるか混乱しやすいのできちんと理解していきましょう!
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コンデンサーと交流
次にはコンデンサーと交流について考えていきましょう。
交流電源の電圧がV = Vmax sin ωt [V] で変化するとします。
①:下グラフ t=0の時
コンデンサーでは、最初に電荷の移動、つまり電流が流れ始めます。
この電流が流れ込む瞬間は、交流の電圧の向きが変わる瞬間ともいえるため、
電流が最大値を取る時、電圧が0となると言えます。
②:下グラフ t=0~T/4の時
次に、徐々にコンデンサーに電荷がたまり始めると満杯に近づくため電流の勢いは落ち、
電圧が上がっていきます。
そして、電流値が0となった瞬間に、電圧は最大値を取ります。
③:下グラフ t=T/4~2/Tの時
②にて、電圧が最大値を取る時を過ぎ下がってくると、電流が逆向きに流れ始めます。
・・・・
という、電流が先に動き、電圧が追いかけるという流れが、コンデンサーに交流を流すと繰り返され、
グラフは下図の通りです。
また、電流Iを表す式はI = Imax sin (ωt + π/2) [A](ここで Imax = ωCVmax) と
π/2分、電圧より位相が進んでいることがわかります。
(※コンデンサーの通電電流式の導出はこちらで解説しています。)
ここで、電流の数式中のImaxに対応する部分を抵抗とコンデンサーで比較すると、
Vmax / R = ωC Vmax となり、 R = 1 / ωC に相当することがわかります。
この1 / ωCのことを容量リアクタンスと呼び、等式の通り抵抗Rのコンデンサー版のようなもので、
この値が大きいほど交流電流が流れにくいことを表しています。
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