単振動における変位・速度・加速度を表す公式と計算方法【sin・cosとの関係】
高校物理における力学の分野では、単振動に関する問題は良く出てきます。
ここでは、単振動の中でもsinやcos、角振動数ωなどを利用して作られる単振動の変位、速度、加速度の公式や計算方法について解説していきます。
・単振動とばねの復元力の公式(F=-kx)
・速度の最大や加速度の最大値・最小値(0)と変位の関係
・単振動の変位、速度、加速度の公式 sin・cosとの関係性は?【等速円運動との関係】
というテーマで解説していきます。
単振動とばねの復元力の公式(F=-kx)
単振動とは、ばねのように伸びたら縮もうとし、縮んだら伸びようとする現象のことを指します。単振動では、元の安定な状態に戻ろうとする力(復元力)を利用しています。
例えば、下図のように壁にばねがついており、摩擦のない土台の上に設置されているとします。ここで、ばねを引っ張り(もしきは縮める)、離すと単振動が開始されます。
単振動においてばねが自然長(変位x=0とする)のときは、復元力は働かず0です。一方でばねが伸びているときには、ばねの伸びxと力Fの公式からF=-kxという復元力が働くのです(kはばね定数)
同様にばねが縮むと、今度はばねを伸ばそうとする方向に復元力が働くのです。
以下のようなイメージです。
なお、このとき伸びる方向を正の値としてしているため、復元力はF=-kxと頭に負号がつくことに注意しましょう。
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速度の最大や加速度の最大値・最小値(0)と変位の関係
また、単振動の問題として速度や加速度がどの位置で最大、最小となるのかが良く問われます。
これは、後程解説する単振動における位置、速度、加速度との計算式をみればわかります。ただ、直感的にイメージしておくも大事であり、以下で確認します。
上述のよう、単振動は「ばねを伸ばすか、圧縮するか」で始まり、このときの自然長からの距離をAとすると、変位の最大値はAとなり、逆に最小値は-Aとなるのです。
このように、単振動の変位が最大・最小となるときには、速度は0となります。この地点を元に、ばねが移動する向きが変わることを覚えておけば、この仕組みが理解しやすくなります。
そして、x=0と自然長となるときに、速度は最大となるのです。
一方で、変位が最大・最小、速度は0とのときには、加速度の大きさは最大となります。これは、復元力F=-kxの大きさが最大になることと絡めて理解しておくと覚えやすいです。
さらに、x=0のときは、今度は加速度も0となるのです。
このイメージと合わせて、単振動の変位、速度、加速度の公式を覚えておきましょう。結局のところ、sin関数、cos関数で表現することができるために、各々の値の最大、最小の関係が結び付けられるのです。
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単振動の変位、速度、加速度の公式 sin・cosとの関係性は?【等速円運動との関係】
単振動の変位、速度、加速度の公式はsin(サイン)、cos(コサイン)、角振動数ω(等速円運動における角速度)、時間などを用いて以下のように表されます。
実は単振動では、等速円運動を直線上に投影したような動きをとります。
なお、変位の位置は等速円運動におけるsinの値を投影したものと一致するために、x=Asin(ωt)と表現できるのです。このときに、Aは振幅とよび、単振動における最大・最小の絶対値にあたります。
以下のようなイメージです。
そして、「位置、速度、加速度の変換方法」でも解説していますが、単振動において変位がAsinωtとわかりましたら、速度はこの数式を微分するといいです。
Asinωtの時間tでの微分では、まずsinがcosにかわり、sinの中身のwtをtで微分したものが頭の係数にかかります。
よって Aω cos ωtが単振動における、速度と時間の関係式となるのです。
さらに、加速度は、速度を微分したものであるために、 Aω cos ωtにおいて、cosを-sinに変えた上で、ωtを微分したものであるωをさらに頭の係数にかけましょう。結果として、単振動における加速度は、 -Aω^2 sin ωtという計算式になるわけです。
なお、変位をxとし、加速度をaと表記しますと、 x = Asinωt から、加速度a = -Aω^2 sin ωt = -A ω^2 xと記載できます。この関係式は単振動における運動方程式から、角速度と周期を求める問題に利用するため、きちんと理解しておきましょう。
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