電池内部の電圧分布、基準電極に必要なこと
このページでは、
・電池内部の電位分布
・基準電極に必要な条件
について解説します。
水素と水素イオンの電子授受平衡時の電位を基準(0)とした際の、
各物質における電子授受反応が平衡状態となる時の電位を標準電極電位と呼びます。
水素と水素イオンの電子授受平衡時の電位を基準(0)とする時、標準水素電極(SHE)という基準電極を使用します(基準電極の各種類と特徴はこちらで解説しています)。
この基準電極を基準電極として使用するには条件があり、この条件を理解するための前置きとして電池内部の電圧分布について解説します。
電池内部の電圧分布
電池端子間に電解液の分解が起こらない範囲での電圧をかけると
①正極付近の電解液には負の電荷が
②負極付近の電解液には正の電荷が
近寄ってきます(下図のよう)。
電極の電荷と逆の電荷(近寄ってきた電荷)が厚みを持ち、この層のことを電気二重層と呼びます。
(電気二重層の詳細はこちらで解説)
電解液に溶けている物質の濃度にもよりますが、この電気二重層形成にはほとんど時間がかからず(0.1や0.01sオーダー)、電圧がかかるとほぼ同時に上図のような状態になります。
(電気二重層キャパシタ等はこの原理を用いて実用化されています)
また、電気二重層を形成するための電流はファラデーの法則に従わない電流(電子授受が関わらない)であるためで、非ファラデー電流と呼びます。
電極付近に正極なら負の電荷、負極なら正の電荷が寄ってくるため、電解液の中央付近は電荷が±0状態(電気的に中性と呼びます)となります。
そして重要なことは、正極付近と負極付近の電気二重層に、電池にかけたすべての電圧が分配されかかるということです。
電極と電子のやりとりをできる距離はÅオーダー程度であるため、Åオーダーの厚みである電気二重層にすべての電圧がかかるということは電子授受が進むということであり、この仕組みはとても重要です。
(電解液濃度が上がると、電気二重層が厚くなるためÅオーダーの範囲にかかる電圧が小さくなるため電子授受反応が起きにくくなります)。
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基準電極に必要な条件
電池において上図のように電圧V(全)を外部電源によりかけたとします。
通常上図、V(正)とV(負)は時間や使用する物質により変化しますので、そのように分配されているかがわかりません。
ここで、例えばV(負)が変化しないものであったとしますと、V(正)=V(全)-V(負)で求められますよね
(端子電圧と正極電位、負極の電位についてはこちらで解説しています)
このVが変化しない電極こそが基準電極であり、必要な条件は前述したように外部から何かしらの影響を受けたとしてもVが変化しないということが必要な条件です。
さらにVが変化しない理由を簡単に掘り下げてみましょう。
例として、標準電極電位の基準電極である標準水素電極(SHE)について考えます
(基準電極の種類と特徴はこちらで解説しています)。
SHEでは、H2⇄2H++2e-
の反応で電子授受平衡が成り立ちます。
平衡時右向きと左向きの反応の速さ(交換電流)が一致しており、上記反応の速さが非常に速いのです。
つまり、外部から何かしらの電圧がかかったとしても、ほとんど影響なく、上記の平衡状態が保たれます。
よって、この平衡状態での交換電流速度が非常に速いことが上述のVが変化しないことという条件を満たすために必要です。
さらに、電流密度が大きいと過電圧が大きくなるため、表面積が大きくなるよう電極には各種工夫がされています(標準水素電極では、白金ブラックがつけられている等)。
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